『ハリー・ポッター』の造形美術監督ピエール・ボハナが新章『ファンタビ』の小道具で魅せる!

インタビュー

『ハリー・ポッター』の造形美術監督ピエール・ボハナが新章『ファンタビ』の小道具で魅せる!

J.K.ローリング自らが脚本を手がけた『ハリー・ポッター』の新シリーズ『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』(11月23日公開)がいよいよ日本に上陸する。新しい予告編も流され、日本でも盛り上がりを見せてきた。本作の重要な小道具を手に来日した造形美術監督ピエール・ボハナにインタビュー。『ハリー・ポッター』シリーズすべてに関わってきたピエールが、小道具の制作秘話を語ってくれた。

『ファンタビ』の主演を務めるのは、『博士と彼女のセオリー』(14)でアカデミー賞主演男優賞を受賞した若い名優エディ・レッドメインだ。彼が演じる主人公の魔法動物学者ニュート・スキャマンダーは、ホグワーツ魔法魔術学校の指定教科書「幻の動物とその生息地」の編纂者だ。彼は世界中を旅して魔法動物を集めているが、ある時トランクから動物たちが逃げ出してしまう!

今回の『ファンタビ』のオファーを受け、J.K.ローリングの脚本を読んだピエールは、そのクオリティの高さにうなったと言う。「想像していた以上に素晴らしいストーリーになっていました。舞台が1926年の世界恐慌前のニューヨークで、みんなが切磋琢磨し合って頑張っている時代なんです。そんな街に、ちょっと変わった英国の魔法使いニュートがやってくるという設定がいいんです」。

『ファンタビ』ではニュートのトランクや杖、繭などの重要なアイテムを手がけている。インタビューでは、彼が持参した貴重な小道具を見ながら説明もしてくれた。小道具はプロダクションデザイナーのスチュアート・クレイグの下、チームで手掛けていくと言う。「クレイグさんがまず監督やプロデューサーと話し合ってコンセプトデザインを作り、僕たちはそれを受けて造形部門を担うんです。素材や使い勝手、形をみんなで話し合って決めていきます」。

今回一番作るのに試行錯誤したのはニュートのトランクだった。「約6か月間かけて作っていきました。このトランクはストーリーを牽引していく重要なものだから、複雑な過程を経て作られました。まずは当時出回っていた既製品をいろいろと調達し、外見を決めてから実用面に入ります。アクションシーンもあるから、あまりデカイものだと扱いづらいので、コンパクトなものにしようと。でも、エディ(・レッドメイン)が中に入ったりするシーンもあるから、体がすっぽり入るようなサイズ感でなければいけない。いろんな状況を考えて合計で17個のトランクを作りました」。

魔法をかける時に使う杖も持ち主の個性に合わせたものが作られたと言う。「ニュートはズボラなタイプであまり持ち物の手入れをしないから、杖は傷だらけになっていて使い込んだ感じになっています。また、彼は動物好きだから、柄の部分は動物の骨や皮ではなく、貝殻を使ったものにしました」。

また、アリソン・スドル演じるクィニーや、キャサリン・ウォーターストン演じるティナの杖にも個性が表れている。「クィニーはとてもファッショナブルな人なので、杖の継ぎ目がアールデコ調になっているし、マホガニーでできています。ティナは地味なキャラクターで洒落っ気がないので、実用的なデザインになっていますね」。

造形美術監督という仕事について「いろんな人とコラボレートしていく過程がとても楽しい」と笑顔で語ったピエール。「今回来日して、その過程の結晶をみなさんにお見せできたことがとてもうれしかったです」。

これまでに『ハリー・ポッター』全シリーズをはじめ、『タイタニック』(97)や『スター・ウォーズ』シリーズ、『ダークナイト』(08)、『ゼロ・グラビティ』(13)、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(14)など、数多くの話題作の小道具を手掛けてきたピエール。造形美術監督という仕事の奥深さを改めて感じると共に、『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』をスクリーンで観る日がますます待ち遠しくなった。【取材・文/山崎伸子】

※ピエール・ボハナは10月15日(土)19時56分~20時54分放映の「世界一受けたい授業」に出演
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