『シン・ゴジラ』を庵野秀明に任せるのは「不安だった」。成功の鍵は樋口真嗣とのタッグ
第29回東京国際映画祭Japan Now部門『シン・ゴジラ』のQ&AセッションがTOHOシネマズ六本木ヒルズで行われ、古代生物学者役として出演している犬童一心、プロデューサーの山内章弘が登壇。庵野秀明総監督を「アーティスト」、樋口真嗣監督を「職人」と分析した犬童が、「その才能と力が融合した」からこそできた映画だと話した。
庵野が総監督、樋口が監督を務め、巨大怪獣の出現で未曽有の危機にさらされた人々を描く本作。庵野総監督、樋口監督とも旧知の仲であり、監督としても活躍する犬童は「庵野さんと樋口さんは長い年月のコンビなので、2人でやるのはいいなと思った」そうだが、「もらった台本が、3時間分くらいあるものだった。これを1本でやると聞いて、他人事ながら『ヤバイな』と思った」と“ヤバイ”雰囲気を察知したそう。
続けて「樋口さんは職人でもあるけれど、庵野さんはアーティスト。アーティストの庵野さんにゴジラを頼むのは、危険だとは思わなかった?」と山内氏にズバリと切り込んだ。会場が笑いに包まれるなか、山内氏は「不安でしたよ、もちろん」と答えて再び会場は爆笑の渦に。山内氏は「脚本を短くしようと思ったけれど、庵野さんは『絶対に2時間に収まる』とおっしゃる」と庵野総監督が意志を貫こうとしたことを明かした。
誰もが2時間に収まるとは思っていなかったそうだが、結果は見事に120分の映画として完成した。役者陣が早口で奮闘したことも成功の鍵となったが、山内氏は「樋口さんと庵野さんのバランスがうまくいっていた」と樋口監督の手腕に触れた。『のぼうの城』で樋口監督と共同監督を務めたこともある犬童も「樋口さんは、映画のためだったらなんでもするという精神が徹底している。『映画が絶対なんだ』という思いを持っている」と語り、「本当に尊敬する」とその姿勢に惚れ惚れ。
さらに犬童は「映画のためには『自分が』というものを捨てられる人」と樋口監督、並びに准監督の尾上克郎を表し、「庵野さんはアーティストだから、意外とそれができないと思う」とぶっちゃけつつ、「庵野さんみたいな人が『シン・ゴジラ』を作れたのは、樋口・尾上がいたから。2人の職人の力と庵野さんのアーティスティックな才能が見事に融合した映画」としみじみと語っていた。【取材・文/成田おり枝】