吉田羊が織田裕二の妻役を語る「愛について改めて考えさせられた」
福山雅治主演映画『SCOOP!』、中井貴一主演映画『グッドモーニングショー』と、話題作への出演が続く吉田羊が、11月5日(土)より公開される映画『ボクの妻と結婚してください。』で織田裕二と夫婦役で共演した。織田を相手に、絶妙な受け手の芝居を見せた吉田が、織田との撮影エピソードを語った。
織田の妻役ということで、プレッシャーを抱えたまま現場に臨んだ吉田だが、初対面の時の織田の心遣いに感銘を受けたそうだ。「織田さんが私に『ずっと共演したいと思っていました』と言ってくださり、そのひと言ですごく楽になりました。あの天下の織田裕二さんが私の名前を知っていてくださったんだ、と感動しました。最初にそういう言葉をかけてくださる織田さんの優しさが伝わり、本当にありがたかったです」。
『ボクの妻と結婚してください。』とは、何とも意表をついたタイトルだが、実はかけがえのない夫婦愛や家族愛をつむいだ愛の物語となっている。余命6か月と宣告された夫・修治(織田裕二)が、自分の亡き後に家族を守ってくれる男を必死に探そうとする。夫婦役を演じた織田と吉田は、現場ではカメラが回っていない時もずっと役柄のままで過ごしていたと言う。
「織田さんはずっと修治さんで、“織田裕二”さんは一瞬も出てこなかったです。織田さんがそういうふうにいてくださったので、私もずっと妻・彩子でいられた感じでした。2人とも余計な話はせずに、ずっとお芝居のことを話していました。台詞合わせもそうですし、台詞が終わった後も役柄として会話を続けてみたり、『あの時はこうだったよね』とそれぞれの役で思い出話をしたりしました」。
吉田はそういう役作りについて「相手の方あってこそできることで、今回織田さんも私も同じ感覚で臨んでいたからこそできたこと」だと語る。「修治さんたちは心の絆が深い夫婦でしたから、お互いに良しということで思いが一致し、呼応し合っていたんだと思います」。
一番心を打たれたシーンは、修治から「僕の命はあと半年です」と打ち明けられるシーンだったと言う。初めて修治の本心を知った彩子は悲しみに打ちひしがれ、感情を吐露する。「あの台詞は現場で聞くのもすごく辛かったですし、涙が止まらなかったです。台本上は『泣く』と書かれていなかったけど、泣けて泣けてしかたなかったです。それは四六時中修治でいてくださった織田さんを見てあふれ出たリアルな感情でした」。
修治は、彩子にとって最高の結婚相手を見つけようと、お見合いパーティに参加したり、結婚相談所を訪れたりする。初めて脚本を読んだ時、吉田はその修治の行動に戸惑ったそうだ。「私自身は、修治さんの余命が半年だとわかったら、最後の瞬間まで2人の時間を過ごしたいと思うし、そこに第三者がいてほしくないとも思ってしまう。でも、彩子さんはあくまで死にゆく修治さんの心を大切にし、その計画に乗る決意をしたんです。そこが難しかったですね」。
彩子の辛い決断に説得力を与えたのは、修治の一生懸命さとまっすぐな愛情だったと言う。「修治さんは『自分の計画は正解に違いない』と信じて疑わないんです。本当に彼は実直な人で、彩子さんも途中からは『しょうがないな』、と応援したくなり、最終的にはその計画に乗るんです。そこもお互いの愛の深さなのかなと思いました」。
本作の出演を経て、人を愛することについて改めて考えさせられたと言う吉田。「愛するということは、愛する人の幸せを願うことなんだなと。だから、彩子さんは自分の気持ちよりも、修治さんの思いを優先させたんでしょうね。この映画をご夫婦で観られる方もこれから結婚される方も、そういうことを話すきっかけになってもらえるといいなと思います」。【取材・文/山崎伸子】