実写版『攻殻機動隊』監督が明かす、スカヨハ抜擢の決め手。バセットハウンドの登場も告白
士郎正宗によるSFコミックの金字塔「攻殻機動隊」をハリウッドで実写映画化する『GHOST IN THE SHELL ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017年4月公開)の予告編が、いよいよ解禁となった。何といっても注目が集まっているのは、“少佐”こと草薙素子を演じるスカーレット・ヨハンソン。勇ましく、セクシー。キレキレのアクションを披露するスカヨハを目にし、期待が膨らんでいる人も多いはず。ルパート・サンダース監督に、キャスティングの決め手を聞いた。
「攻殻機動隊」は、脳以外は全身義体の世界最強の少佐率いるエリート捜査組織公安9課、通称“攻殻機動隊”の奮闘を描く物語。1995年には『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』として押井守監督によりアニメ映画化され、傑作として今なお世界に人気を広げている。
ファンが多ければ多いほど、実写化のキャスティングには物議がつきものだ。しかし撮影現場を訪れた押井監督は、「スカーレット・ヨハンソンの素子を1本通して最後まで観てみたい。僕が想像した以上に、役になっていると思う」と絶賛。「間違いなく今まで作られた『攻殻』の中で一番ゴージャスな作品になると思う」とまで言わしめた。
サンダース監督は「最初からスカーレットにやってほしいと思っていた」と第一希望のキャスティングだったと告白。「彼女は20年のキャリアのなかで、知的な選択をたくさんしている。とても勇気のある役者だ。他にそういう役者は見つからない」とスカーレットの女優としての姿勢を「知的かつ、勇気あるもの」と分析する。
さらに「サイバーパンクの世界観にもぴったりな容姿を持ち合わせている。彼女のタフさも少佐を表すことができると思ったんだ。人間の思考を持つアンドロイドという、細かいニュアンスもしっかり表現できる類まれな役者だ」と複雑なキャラクターを演じるにもぴったりだと思ったと言う。
素子を白人であるスカヨハが演じることも物議を醸したが、「必ず批判する人はいると思っている」とサンダース監督。「でも今回、彼女が演じているのはアンドロイド。歴史上の人物というわけでもないので、どの人種でなければいけないということはないと思っている」と持論を話し、「押井さんが認めてくださったのはすごくうれしい。今回のバージョンの少佐にぴったりだと感じてくださった。それはすごく大きな後押しになっている」と押井監督の言葉も励みとなったようだ。
「日本の文化にインスピレーションを受けて、グローバルな観客に向けて発信するもの」と視野を広げているサンダース監督。「そういった意味でも、スカーレットでよかったと思っている。みなさんにもそう思っていただけると、僕は思っているよ」と自信をのぞかせていた。
サンダース監督自身、原作の大ファンだったそうで、リスペクトと愛情を注いだ実写化となった。「95年に押井さんの作品を観たんだけれど、あまりにも先見がある作品だった。世界がテクノロジーを信じることが一つのテーマで、僕はそこに希望があると思ったんだ。僕は原作の大ファンだし、自分勝手かもしれないけど、自分が大好きでインスピレーションを受けたものを実写にして世界中の観客に届けたかった。サイバーパンクの美意識は、なるべくキープしたいと思っていたよ」。
本作について、「リメイクではなく、リイマジニング」、加えて「オリジナルストーリー」と明かす。「シリーズの根底に流れるテーマや難しい要素を感覚的に伝える映画にしたかった。説教臭くならず、人間性やテクノロジーについて心に響く映画にしたかった」と新章について解説しつつ、「バセットハウンドも出るよ。押井さんのバセットハウンドを撮影地に連れて来ようとしたけれど、それはできなかった(笑)」と、『イノセンス』をはじめ押井作品に多く登場するバセットハウンド犬の出番があることも教えてくれた。【取材・文/成田おり枝】