福士蒼汰、小松菜奈が泣くシーンで「無力でした」
七月隆文の同名小説を映画化した『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(12月17日公開)で、運命的な恋に翻弄される2人を演じた福士蒼汰と小松菜奈にインタビュー。風光明媚な京都でのロケを心から楽しみつつ、切ないシーンでは感情の機微をどういうさじ加減で表現していくかとかなり悩んだそうだ。
ある日電車の中で出会った福寿愛美(小松菜奈)にひとめ惚れをした、美大生の南山高寿(福士蒼汰)。高寿が勇気を振り絞って彼女に声をかけたことで、2人は付き合うようになる。そこまではごくありふれたラブストーリーの流れだが、ある日愛美の口からある秘密が明かされ、高寿は激しく動揺する。
中盤で初めて『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』というタイトルロールが流れ、その意味合いが心に揺さぶりをかける。監督は『ホットロード』(14)や『青空エール』(16)などの青春ラブストーリーを手がけた三木孝浩だ。
デートシーンについて福士は「京都ロケはすごく楽しみました。三木監督からは細かい演出もなかったので、自由に演じさせていただいた感じです。アドリブが多かったので、自分たちの素の表情がいっぱい入っていると思います」と言うと、小松も「普通にはしゃいでいて、三木監督から『いまのは愛美じゃないかも』と言われたこともありました」と笑う。
2人共、とても居心地が良かったという三木組。福士は「とても温かい組でした」と柔和な表情で話す。「とにかく三木監督が常に温かくて、冷たいところなんて1mmも見たことがなかったです。映像にはストイックですが、自分たちにはすごく優しくて、本当にいつまでも京都で撮っていたいと思えました。それが人生の一部になっても面白いと思えるほど楽しかったです。もちろんあのシーンをやり直したいと悔しい思いをしたりもしましたが、それも含めて監督はすごく温かい目で見てくれたなとは思います」。
小松はすべての撮影終了後に涙したそうだ。「無事に終わって良かったというよりも悔しい気持ちの方が大きかったです。私は泣くシーンはすごく苦手で、『本番どうぞ』と言われてもすぐには泣けないし、そこまで自分の気持ちをもっていくのが大変で」。
小松は今回泣くシーンが多く、特に愛美が最初に駅で泣くシーンは、電車が来るタイミングとの兼ね合いもあり、かなり苦戦したそうだ。「すごく焦っていましたが、目薬を使うと、あとで映画を観た時に『このシーンは目薬だ』と思うのが嫌で、絶対に頼りたくなかったんです。だんだん追い詰められていって『誰も話しかけないで』という雰囲気まで出しちゃって、いろいろと考えてしまいました」。
福士は「そういう時は何もできないです。無力なんです。僕もすごく考えますが、変に話しかけてもダメだと思いますし」と言うと、小松が「やっぱり相手が泣くシーンは一番難しくないですか?逆もあったわけだし」と尋ねる。福士も「そうですね。すごくそう思います。俺、迷惑かけてないかな?と思ってしまいます」と共感する。
そんな繊細な恋人たちの心のひだを余すことなく表現した福士たち。最後にメッセージをもらった。
福士は今回、改めて愛する人への向き合い方について考えたそうだ。「当たり前の日常が当たり前ではなかったと、高寿は途中で気づきます。やっぱり2人で会っている時間をどう過ごすのか、愛する人のすべてを受け入れられるかどうかということが今回のテーマだと思います。そういう覚悟があるかどうかが大事なのかなと思います」。
小松も大切な人と過ごす時間の尊さを実感したと言う。「映画自体はファンタジーで現実にはありえないことだけど、大切な人といっしょにいてお互いが成長していくことは普段の日常でもあることだと思うんです。たとえば恋人や友だちや家族とかいっしょにいるとそれが当たり前のことになってしまうけど、この映画を観てもらえれば、1つ1つの瞬間が大事だと気づけるのではないかと思います」。【取材・文/山崎伸子】