家族のような社風がピクサー作品の要!【ピクサー最新レポート4】
大好評発売中のディズニー/ピクサー映画『ファインディング・ドリー』のMovieNEX。その人気の秘密を探るべく米カリフォルニア「ピクサー・アニメーション・スタジオ」に潜入。観るたびに発見をくれるピクサー作品の、遊び心とインスピレーションの源に迫る!第4回は、アンドリュー・スタントン監督とプロデューサーのリンジー・コリンズに、制作の舞台裏から、MovieNEXに収録されたボーナス映像の楽しみ方までを聞いた。
お気に入りのボーナス映像について聞いてみると、リンジーは「私は『突撃!海中インタビュー』が好きだわ」とのこと。これは劇中のキャラクターたちがドリーについてインタビュー形式に話すというユニークな映像集。監督によると、もともとは映画のティーザー映像として使われる予定だったそうで「それぞれのキャラクター視点で話しているのがおもしろいと思ったんだ。そして最後にドリーが登場する。(ティーザーでは使われなかったけど)ボーナス映像に収録されてよかったよ」と教えてくれた。
また、監督のイントロダクション付きで楽しめる「未公開シーン」には、完成版にたどりつくまでの5つのオープニングシーンも収録されている。「作品を作る時はいつも最後にオープニングを決める」そうだが、監督は「完成するまでには何度も練り直したけれど、このボーナス映像で観られる“ベビー・ドリーがアップでカメラの方を向くシーン”が出来た瞬間に、『これこそがオープニングシーンになるべきだ』と皆が思った。それで、この映画のオープニングの方向性が定まったんだ」と語る。
そのほか「水族館リサーチに密着」「CGエラー映像集」など、普段は見られない貴重なボーナス映像で、『ファインディング・ドリー』の舞台裏を知ることができる。リンジーは「“主人公が忘れんぼう”という設定が、(物語を作る上で)いかに大変だったか、クリエイターたちが語っているわよね。この映画を作り上げるのがどんなに難しいことだったかを理解してくれることを願っているわ(笑)」と話す。
改めて注目してほしい本編のシーンを尋ねると、「ドリーが海の中で一人ぼっちになって、過去を再発見するシーンかな。それから、これは観ていない人にとってはネタバレになってしまうが、家族と再会するシーン。『これがこの作品のすべてだ』と思えるほど、物語の核を捉えることができたシーンだと思っているよ」と監督。
最後にピクサー作品だけが持つ魅力を尋ねると、ピクサーの社風こそが要だと教えてくれた。リンジーによれば「才能あふれる若い人々を集め、できるだけ早くチャンスを与えてきたから、すぐに成長したんだと思うわ。今もまだ、『トイ・ストーリー』の頃からのスタッフがたくさん会社にいるのはすばらしいこと。よく冗談で、『失敗のために共同作業している』と言っているの。だって、作品を作り始めて数年間――つまり完成までは失敗の連続なの。家族のような社風のおかげで、『さあ、長くつらい工程だけど、もう一回やるぞ』という気にさせてくれるんだと思うわ」。
監督もこう語る。「つい先日、この先の10年間で製作する長編映画についての会議をしていたんだけど、ボードに書きだされたのは作品名ではなく監督名だった。おもしろいよね。僕たちは常に、作品ではなく、人材に投資をしてきたんだ。人こそが作品を決めていくものだから。僕はこのことをとても誇りに思うよ」。リンジーも深く頷く。「彼らに物語を語る機会を与えるということ。それができるなんて、私たちは幸運よね!」。【取材・文/Movie Walker】