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「ファンタビ」グリンデルバルドは単なる悪役じゃない!名優マッツ・ ミケルセンの“悪役列伝”でひも解く人間味とは?

コラム

「ファンタビ」グリンデルバルドは単なる悪役じゃない!名優マッツ・ ミケルセンの“悪役列伝”でひも解く人間味とは?

陰湿な拷問シーンに戦慄…!『007 カジノ・ロワイヤル』のル・シッフル

ミケルセンが『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』で演じるグリンデルバルドは、「ハリー・ポッター」シリーズのヴォルデモート以前に世界を混乱に陥れた危険な魔法使い。本作では、魔法界に国際魔法使い連盟の新たなリーダーを決める選挙が迫っており、候補者の1人としてグリンデルバルドが立候補する。彼が任命されれば魔法界と人間界の全面戦争は避けられない。そこで、魔法動物学者のニュート・スキャマンダー(エディ・レッドメイン)と彼の恩師である偉大な魔法使い、アルバス・ダンブルドア(ジュード・ロウ)は、未来が見えるグリンデルバルドをかく乱させるため、寄せ集めチームを結成して、5つの魔法のトランクに隠された“秘密の作戦”で立ち向かおうとする。

グリンデルバルドに対抗するため、ニュートとダンブルドアは寄せ集めチームを結成する(『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』)
グリンデルバルドに対抗するため、ニュートとダンブルドアは寄せ集めチームを結成する(『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』)[c] 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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グリンデルバルドの特徴としてまず挙げられるのは、その冷徹さ。非魔法族である人間(マグル)を虫けら程度にしか見ておらず、映画冒頭でのマグルのカフェでダンブルドアと対話をするシーンでは、「臭いが我慢ならない」「マグルの世界を焼き尽くす」と発言して宣戦布告。物語のキーとなる生まれたばかりの魔法動物、キリンをやさしく抱きかかえたと思えば、躊躇することなくその喉笛を搔っ切るなど、目的のためには手段を選ばない姿に戦慄させられてしまう。

魔法界と人間界の支配をもくろむ黒い魔法使い、ゲラート・グリンデルバルド(『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』)
魔法界と人間界の支配をもくろむ黒い魔法使い、ゲラート・グリンデルバルド(『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』)[c] 2022 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
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ミケルセンが世界的な知名度を獲得するきっかけとなった『007 カジノ・ロワイヤル』で演じたル・シッフルもまた、冷酷無比さが際立つキャラクターだ。会計士でテロ組織から預かった金の資金洗浄や運用を行っているル・シッフルは、大型旅客機製造会社の株を空売りしたうえで飛行機を爆破し、巨額の資金を得ようとするが、ジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)の介入によって失敗。組織の金を失った彼は、モンテカルロにあるカジノで開催されるポーカー大会に参加し、金を取り戻そうとする。

サディスティックな犯罪組織の会計係、ル・シッフルを怪演した『007 カジノ・ロワイヤル』
サディスティックな犯罪組織の会計係、ル・シッフルを怪演した『007 カジノ・ロワイヤル』[c]Everett Collection/AFLO

計画に失敗したことで、組織から命を脅かされるなど妙な哀愁も漂わせるル・シッフル。左目の涙腺に異常があって“血の涙”が流れ出るため、それを拭うためのハンカチが手放せず、事あるごとに吸引器のようなもので薬物を吸い込むなど、神経質なところも。数字に強く、得意のポーカーでボンドと緊迫感あふれる心理戦を繰り広げるが敗北。追い詰められた彼はボンドを誘拐し、座面が空いたイスに座らせ、先を丸く結んだ太いロープで何度も股間を責め立てるという陰湿な拷問を実行する。その残酷極まりない方法もさることながら、額に浮かべた大量の汗がギラギラと光るあまりにも必死な形相も相まって、観客に強烈な印象を植え付けた。本作での怪演があったからこそ、ミケルセンの“悪役列伝”が始まったと言えるだろう。

得意のポーカーでル・シッフルは、緊迫感あふれる心理戦をジェームズ・ボンドと繰り広げた(『007 カジノ・ロワイヤル』)
得意のポーカーでル・シッフルは、緊迫感あふれる心理戦をジェームズ・ボンドと繰り広げた(『007 カジノ・ロワイヤル』)[c]Everett Collection/AFLO

『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』の高慢な剣の達人、ロシュフォール隊長

冷徹さで言えば、アレクサンドル・デュマ・ペールの小説「三銃士」を新たに映画化した『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』も外せない。主人公のダルタニアン(ローガン・ラーマン)と三銃士のアトス(マシュー・マクファディン)、ポルトス(レイ・スティーヴンソン)、アラミス(ルーク・エヴァンス)の宿敵で、リシュリュー枢機卿(クリストフ・ヴァルツ)の腹心の剣の達人、ロシュフォール隊長役で出演。傲慢な性格のロシュフォールは、田舎から出て来たばかりのダルタニアンのみすぼらしい身なりを見て、彼を見下し、事あるごとにバカにしている。部下に対しても高圧的で、銃の整備を怠るなど失態を犯した者は有無を言わせずに粛清し、血も涙もない人物として描かれていた。

三銃士の宿敵、ロシュフォール隊長を演じた『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』
三銃士の宿敵、ロシュフォール隊長を演じた『三銃士 王妃の首飾りとダ・ヴィンチの飛行船』[c]Everett Collection/AFLO

すべては愛する者を取り戻すため…『ドクター・ストレンジ』の闇の魔術師、カエシリウス

グリンデルバルドの厄介なところは、ミケルセン自身が彼について「目的を果たせば世の中が良くなると頑なに信じている」と語るように、魔法族がマグルを支配することこそが“正義”と捉えているところ。こうした揺るぎない信念を持ったキャラクターは、『ドクター・ストレンジ』で演じた闇の魔術に魅せられたカエシリウスとも共通している。

闇の魔術に魅せられたカエシリウス役で出演した『ドクター・ストレンジ』
闇の魔術に魅せられたカエシリウス役で出演した『ドクター・ストレンジ』[c]Everett Collection/AFLO

愛する者を失い、人生の意味を見いだすために、至高の魔術師エンシェント・ワン(ティルダ・スウィントン)の弟子となったカエシリウス。しかし、エンシェント・ワンが弟子たちに禁じていた闇の魔術を使用していたことを知り、彼女の教えに背いて離反。同じく不満を持った弟子たちを率い、時間の概念をなくし、死を超越するという目的のため、暗黒次元の王ドルマムゥに世界を委ねようとする。

カエシリウスの行動は世界を破滅に導くものだが、彼自身はそれが正しい行いだと信じている。“大きな幸福のためには、小さな犠牲は厭わない”とばかりに、かつての仲間である魔術師たちを殺害し、人々の犠牲も顧みずに街を破壊。エンシェント・ワンや兄妹弟子のドクター・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)の前に立ちはだかり、幻想的な魔術バトルを繰り広げた。

愛する人を失ったカエシリウスは、死を超越した世界を生みだそうとしている(『ドクター・ストレンジ』)
愛する人を失ったカエシリウスは、死を超越した世界を生みだそうとしている(『ドクター・ストレンジ』)[c]Everett Collection/AFLO

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