石原さとみの覚悟に圧倒され、共演陣の演技に心が震える『ミッシング』など週末観るならこの3本!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
石原さとみの覚悟に圧倒され、共演陣の演技に心が震える『ミッシング』など週末観るならこの3本!

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石原さとみの覚悟に圧倒され、共演陣の演技に心が震える『ミッシング』など週末観るならこの3本!

週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品3本を、MOVIE WALKER PRESSに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

MOVIE WALKER PRESSスタッフが、いま観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、石原さとみが娘を失い追い詰められていく母親を演じる社会派ドラマ、草なぎ剛を主演に迎えた白石和彌監督初の時代劇、学校の“光“と“闇“を炙りだすサスペンス・スリラーの、ハラハラする3本。

俳優の真の実力を発見する…『ミッシング』(公開中)

【写真を見る】夫婦間の温度差や、マスコミの報道、SNSでの誹謗中傷により次第に追い詰められていく母、沙織里(『ミッシング』)
【写真を見る】夫婦間の温度差や、マスコミの報道、SNSでの誹謗中傷により次第に追い詰められていく母、沙織里(『ミッシング』)[c]2024「missing」Film Partners

ストーリーの軸となるのは幼女の失踪と両親の苦闘なのだが、その周辺で起こる小さなエピソードも含め、現代社会のさまざまな問題、歪みが浮かび上がってくる。メディアの報道姿勢、他人への無関心と不寛容、カスタマーハラスメント、子どものトラウマなどを巧みに本筋に絡めてくる構成に吉田恵輔監督の持ち味が全開だ。観る人の立場やモラル観によって、その問題がどう心に刺さるかも変わってくるはず。それこそが映画の醍醐味だと実感。

中盤のあるシーンで、完全に“壊れてしまう”壮絶な演技をはじめ、悲しみと怒りで混乱し、瞬時に感情が切り替わる主人公役で、石原の俳優としての覚悟に圧倒されない人はいないだろう。同時に、どこか冷静に対処する夫役の青木崇高、深い闇を抱えていそうな弟役の森優作、そして使命感と現実の間で揺れ動くテレビ局記者の中村倫也と、共演陣の演技に何度も心が震え、背筋が凍り、人間の生々しさを突きつけられる感覚。俳優の真の実力を発見するという意味で、年間で最高レベルの一作なのは間違いない。(映画ライター・斉藤博昭)

気迫の演技に目を奪われる…『碁盤斬り』(公開中)

冤罪事件に巻き込まれ、復讐に燃える武士の戦いを描く『碁盤斬り』
冤罪事件に巻き込まれ、復讐に燃える武士の戦いを描く『碁盤斬り』[c]2024「碁盤斬り」製作委員会

白石和彌監督が草なぎ剛を主演に迎え、古典落語をベースにオリジナル脚本で描く胸アツの感動リベンジ・エンタテイメント。囲碁の達人で、ワケあって江戸で娘と極貧生活を送る浪人が、武士の誇りをかけ復讐に身を投じていく姿を描く。

曲がったことが大嫌いで、一旦こうと決めたらなにがあっても後には引かない柳田格之進(草なぎ)。本作が初の時代劇となる白石監督は、清廉潔白かつ頑固一徹な格之進の生き様を真正面から骨太に活写しつつ、その娘であるお絹(清原果耶)による武家に生まれた女性のせつない献身もまた描きだす。草なぎが一本筋の通った格之進を魅力的に体現。泰然自若とした佇まいから一転、武士の矜恃があふれだす気迫の演技に目を奪われる。加えて、囲碁が大好きな格之進が、碁を打つことでつむいでいく身分を越えた絆や友情もいい(ちなみに柳田家に降りかかる災厄はほぼ囲碁がらみ)。人情、悲哀、愛情、疑惑そして活劇と様々な要素がバランスよく配置され、脇を固める中川大志、奥野瑛太、音尾琢真、市村正親、斎藤工、小泉今日子、國村隼ら豪華俳優陣のアンサンブルも見ごたえ充分!(ライター・足立美由紀)


演出の鋭さ、脚本の巧みさ、いずれも一級品…『ありふれた教室』(公開中)

学校を舞台に、正義や真実の曖昧さを描く『ありふれた教室』
学校を舞台に、正義や真実の曖昧さを描く『ありふれた教室』[c] if… Productions/ZDF/arte MMXXII

ドイツ映画賞で5部門を受賞し、先の第96回アカデミー賞でも国際長編映画賞にノミネートされた本作は、とある中学校を舞台にした学園ドラマ。しかし、いわゆる感動作でも青春映画でもない。主人公は若き女性教師のカーラ(レオニー・ベネシュ)。校内で多発する窃盗事件を解決しようとした彼女のささいな行動が思わぬ波紋を呼び、あれよあれよという間に学校の秩序が崩壊し始めるというサスペンス映画なのだ。

カーラは教育熱心で、生徒にも誠実に接しようとする善良な教師だが、ふとした誤解やウワサ話の流布によって生徒、保護者、同僚教師と対立し、孤立無援の窮地に追いつめられてしまう。さまざまな人種や立場の人々が集まる学校を“社会の縮図”に見立てたドイツの俊英、イルケル・チャタク監督は、教育現場のリアルな問題を描きながら、人間関係のもろさや正義というものの曖昧さをあぶりだす。演出の鋭さ、脚本の巧みさ、いずれも一級品。大混乱の果ての驚くべきエンディングを見届けた後も、複雑にして深い余韻が残される一作だ。(映画ライター・高橋諭治)

映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて。

構成/サンクレイオ翼

※吉田恵輔の「吉」は「つちよし」が、草なぎ剛の「なぎ」は弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記

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