梁音
華老栓
数千年の封建支配の重圧の下で近代に突入せざるをえなかった中国の苦脳を描く魯迅の小説の映画化。
早朝の紹興。老栓夫婦が経営する茶館では、今日も常連たちが集まり、革命論を戦わせている。老栓夫婦の心配ごとの一つは、一人息子が肺病もちで、治療薬の人血マントウが高くて思うように買えないことだ。その人血マントウを支配しているのは首切り役人の康。一方、一人息子夏瑜を高官殺害の罪で逮捕された夏四[女乃女乃]も、息子に会いたい一心で康に泣きついていた。おろかな夏四[女乃女乃]は、望みがある筈もないのに康にお金をみつぐ。やがて、夏瑜は、潔ぎよく処刑されてゆき、その血をしたたらせたマントウを大事そうに受けとると、息子に与える老栓夫婦。しかし、容体は悪くなる一方。そしてとうとう息子は死んだ。息子を失くしたあわれな母二人が、それぞれの墓の前でうなだれる姿があった。夏瑜の墓前には、しかし、花が捧げられているのであった。
[c]キネマ旬報社