トラベラー
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1995年9月16日公開、72分
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サッカーに熱中する悪童の冒険をつづり、ユーモアの中に一抹の残酷さを覗かせる作品。イラン映画界から、今や世界でもっとも注目を集める映画作家のひとりとなった、「クローズ・アップ」「オリーブの林をぬけて」のアッバス・キアロスタミ監督の長編処女作にあたり、脚本も自身が担当。撮影はフィルズ・マレクザデエ、音楽はカンビズ・ロシャンラヴァン、編集はアミール・ホセイン・ハミ、録音はアハマッド・アスカリがそれぞれ担当。出演はハッサン・ダラビ、マスード・ザンベグレーで、出演者は全員素人なのも同監督の演出の原則である。ちなみにハッサンは本作出演の20年後、「ドキュメント・キアロスタミの世界」に顔を見せている。またサッカーはパーレビ時代からイランでもっとも人気のあるスポーツであり、革命のあとも変わらないのは、同監督の「そして人生はつづく」を見ても分かる通り。93年山形国際ドキュメンタリ-映画祭でキアロスタミが審査員を務めた折りに審査員作品として上映され絶賛を拍し、満を持しての劇場公開。併映は同監督の処女作に当たる短編「パンと裏通り」。

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ストーリー

小学生のガッセム (ハッサン・ダラビ) はサッカーに夢中。学校では落ちこぼれで、親もこの子の教育にはお手上げ状態。テヘランで行われる大きな試合をなんとしても見たい。そこで彼は自分で試合を見に行く金を集めはじめる。親から家の金を盗み、母親が校長先生に相談して校長からひどい折檻を受けても、この決意だけは変わらない。親友をむりやり連れだして授業をさぼり、文房具を売ろうとするがうまくいかず、親友の家からカメラを持ち出すがこれもいい値にはならない。そこで一計を案じて学校帰りの子供たちに、写真を撮ってやるから、といって金を巻き上げる。さらに自分のチームのサッカーゴールとボールをライバル・チームに売り、なんとか必要な金を集め、彼は夜に家を抜け出してテヘラン行きのバスに乗る。だがスタジアムに着くと切符はもう売り切れ、そこで彼は有り金をはたいてダフ屋から切符を買う。試合まではまだしばらく時間がある。テヘランに来るのはまだ二回目の彼は、しばらくスタジアムの周囲を散歩する。ジョギングする人、高級そうなプールで遊ぶ子供たち。やがて公園の芝生で昼寝をする人たちを見た彼は、自分も一寸ひと休みのつもりで横になるが、そのまま寝入ってしまう。夢のなかでは学校で先生にしかられ、親や友達など金をだまし取った相手が自分をリンチしに詰め寄ってくる。怖くて目を覚まし、ガッセムは慌ててスタジアムに走る。だがもうスタジアムに人影はなく、試合は終わっていた。

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作品データ

原題
Mossafer The Traveller
映倫区分
G
製作年
1974年
製作国
イラン
配給
ユーロスペース
初公開日
1995年9月16日
上映時間
72分
製作会社
アッバス・キアロスタミ


[c]キネマ旬報社