菅佐原英一
椎葉
婦人生活連載の井上靖の小説を「貝殻と花」の田畠恒男が脚色・監督し「僕は横丁の人気者 二部作」の斎藤毅が撮影を担当した。出演者は「母性日記」の菅佐原英一、「修禅寺物語」の草笛光子、「愛情会議」の大木実、「愛の一家」の紙京子の他に斎藤達雄、吉川満子、沢村貞子、水島光代、奈良真養、永井智雄など。
一時の気まぐれから家出をし九州から上京した藤川京子は自動車事故が機縁となり新聞記者椎葉を知った。そして鎌倉に住む椎葉の伯母の世話になることとなった。椎葉の伯母もすっかり彼女が気に入った様子であった。椎葉はおしゃれ雑誌「意匠社」の記者椿泰子と相愛の仲であったが、佐倉という男に心を奪われた泰子から愛情の解消を求められ悩んでいた。佐倉は泰子に旅行しないかと誘った。泰子は承諾し、二人は九州に向った。椎葉の勤めている新聞社ではある密輸事件の情報を集めていた。その事件の背後には佐倉という男が動いていることがわかり、折しも九州に飛ぶ佐倉を追うことになった。時津部長からその話をきかされた椎葉は追手を志願した。佐倉と椎葉は同じ飛行機で福岡に着いた。まもなく椎葉は佐倉が同伴者と長崎へ出発することを知った。同伴者は泰子であった。一方椎葉を愛する京子も彼を追って九州の家に帰って来た。京子の両親は彼女の気持を知ると椎葉に会おうといった。京子は両親の伝言をもって長崎支局に椎葉を訪ねた。椎葉はその頃佐倉に面会を申しこんでいた。泰子は佐倉の身に迫る危険を感じ、代理として椎葉に会った。泰子は椎葉から初めて佐倉の正体を知らされたが、彼女の心はそれでもうごかなかった。傷心をいだいて椎葉は京子の両親にも会わず帰京した。京子も彼を追って再度上京した。ある日椎葉を訪ねて社に泰子が現われた。彼女は佐倉と彼女との長崎でのことを記事にしないでくれと頼んだ。職業と愛情の板ばさみになって辞表を出した椎葉に、時津部長は佐倉が伊豆で自殺したことを知らせた。現場に駈けつけた椎葉は泰子の佐倉に対する愛情が変っていないのを知り、彼女への愛をあきらめた。東京に戻った椎葉は鎌倉の伯母から京子が九州へ帰ることをきかされ列車に乗った。途中大船駅から悄然とした京子が乗って来た。「どこへいらっしゃるの」「福岡の貴女のお父さんに会いに行くんだ」京子の目が大きく開いて涙が流れ落ちた。そして彼女は「悲しいんじゃないんです。ただ涙が出て来るんです」といった。
椎葉
椿泰子
佐倉
京子
父良太郎
母春尾
椎葉の伯母
時津部長
西尾
下宿の小母さん
石井
見合の青年
青年の父
青年の母
波岡夫人
通信員山本
警官
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