東千代之介
源氏丸
「織田信長」の結束信二の脚本を「あばれ振袖」の萩原遼と「忍術左源太」の深田金之助が共同監督し、「あばれ振袖」の藤井春美と「水戸黄門漫遊記 幽霊城の佝僂男」の杉田正二が撮影に当った。主なる出演者は「ふり袖小天狗」の東千代之介、「牢獄の花嫁」の伏見扇太郎、「水戸黄門漫遊記 幽霊城の佝僂男」の千原しのぶ、月形竜之介、「薩摩飛脚 完結篇(1955)」の長谷川裕見子など。音楽担当の一人は尺八の福田蘭童である。
前篇--兄頼朝に追われた源義経は蒙古に逃げる時、津軽の国安津佐和城の垣咲勤之助に一子源氏丸を托した。義経は蒙古に渡って成吉思汗になったが、奸将打児珍の為に殺された。義経が日本に残した財宝を伝える鬼冠の巻物は打児珍の手に移った。打児珍は財宝を手にすべく海を渡って安津佐和城に軍を進めた。城代家老鰐淵重兵衛は打児珍と気脈を通じ源氏丸を殺し城の乗取を企てたので、垣咲は源氏丸とともに城を脱出してアイヌ集落に身をかくした。その際垣咲は一子さくら丸を源氏丸と名乗らせ城中に残した。それを知った打児珍は怒って、垣咲の妻好乃を斬りさくら丸をも斬ろうとしたが、重兵衛は人質として一人娘小百合とともに育てた。二十年たち、アイヌ集落で垣咲は崑又と名を変え、源氏丸を育てていた。成人した源氏丸は崑又から己の素性をきかされ、彼もまた巻物を求めて活躍することになった。打児珍と重兵衛はこれを知り、津軽の検非遣使京極主計頭を動かし崑又と源氏丸の逮捕をあせった。また崑又等の住家を探知した重兵衛はさくら丸を討手としてアイヌ集落を襲わせた。崑又もまた主計頭にすべてを打ちあけようとして旅立った。実の父とも知らずさくら丸は崑又を襲ったが、かえって崑又の当身に倒れた。それを救ったのは崑又の後を追う源氏丸であった。主計頭は崑又の話をきいて協力を約した。源氏丸は単身安津佐和城に忍びこんだが城主に発見され苦境に落ちた。しかしさくら丸に救われ、アイヌ集落に辿りついた。集落では源氏丸の愛人恵美加の父麻利毛が事情を知り、源氏丸と崑又を集落から追放しようとして重兵衛、打児珍に訴えた。重兵衛等の軍勢にかこまれた源氏丸と崑又は危機に落ち入った。後篇--安津佐和城ではさくら丸が源氏丸を逃がした罪で地下牢につながれていた。その彼を救ったのは重兵衛の娘小百合であった。さくら丸は小百合からすべてをきいた。重兵衛は母の敵であり、妹と思った小百合は敵の娘なのだ。さくら丸はアイヌ集落にかけつけた。しかし源氏丸、恵美加、崑又は乱闘の末離れ離れになっていた。崑又は重兵衛に捕えられた。丁度そこへ主計頭が城内視察に来た。源氏丸は主計頭観迎の宴の最中にアイヌの踊り子の一人に化けて打児珍に近づき刺そうとしたが重兵衛の配下に発見された。危い源氏丸を手裏剣で救ったのは彼を慕い安津佐和城下に来ていた恵美加であった。しかし源氏丸は再び城中に向った。計略とも知らずニセの巻物を掴まされ、更に崑又を救わんとしたが捕えられて投獄された。一方さくら丸を探す小百合と、源氏丸を探す恵美加は知り合いとなり、二人は協力することになった。小百合は源氏丸を救い、恵美加ははさくら丸を探し出した。その頃主計頭も重兵衛達の悪業を示す数々の証拠を持って安津佐和城に乗り込んで来た。正義の剣の前に邪悪の剣は亡びた。源氏丸達は争いのもととなった鬼冠の巻物を焼き捨てた。さくら丸は小百合と安津佐和城に残り、源氏丸と恵美加は新天地を求めて大草原を進んでいった。
源氏丸
さくら丸
京極主計頭
小百合
恵美加
垣咲勤之助
好乃
打児珍
与古溝殿三
久呂木龍之丈
麻利毛
伊須良
異国の宣教師
印度の占師
鰐淵重兵衛
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