エルネスト・アロンソ
Archibaldo De la Cruz
恋した相手に殺意を抱くが、そのたびに相手の女性がなぜか勝手に死んでしまう主人公の“犯罪人生”を描くブラック・コメディ。「アンダルシアの犬」「エル」などの巨匠ルイス・ブニュエルのメキシコ時代の代表作で、今回は日本が初公開となる。製作はアルフォンソ・バティーニ・ゴメス。原作はメキシコの劇作家ロドルフォ・ウシグリの唯一の小説で、ブニュエルがエドゥアルト・ウガルテ・パジェスと共同で脚色。撮影は「嵐が丘」(53)、「乱暴者」のアグスチン・ヒメネス、音楽はホルヘ・ペレス、美術が「皆殺しの天使」のヘスス・ブラーチョ、編集は「愛なき女」などのホルヘ・ブストスと、それぞれブニュエルのメキシコ時代の常連スタッフが担当。主演は「嵐が丘」のエルネスト・アロンソで、この映画化の企画は彼がブニュエルに持ち込んだという。共演は撮影終了後まもなく恋の悩みで自殺したというミロスラバ・ステルンほか。
メキシコの革命のさなか、ブルジョア家庭の幼い息子アルチバルドは、思う相手を殺す魔力があるというオルゴールに、美しい家庭教師の死を願った。とたんに彼女は市街戦の流れ弾に首を撃ち抜かれ、彼の目の前で死んだ。大人になったアルチバルド(エルネスト・アロンソ)は病院でこの話をして、彼女は私が殺したという。怪訝な顔をする看護婦の尼僧に、アルチバルドは神を信じているなら死も至福だろうと言って剃刀を向ける。怯えた彼女は病室を走り出て、故障中のエレベーターの入口から転落して死ぬ。証人として警察に出頭した彼は尼僧は自分が殺したと言って、事故死だと決めてかかっていた検事を唖然とさせる。さらに彼は自分の“連続殺人”について語りはじめた。宝石商で件のオルゴールに再会したアルチバルドは、買いかけていた老夫婦に「母の形見だから」と頼み込んで譲り受ける。彼は自分の心に暗い欲望が湧いてくるのを感じる。婚約者のカルロッタ(アリアドゥナ・ウェルテル)に会いに行くアルチバルド。家の門前でパトリシア(リタ・マセド)という妖艶な女が彼に声をかける。アルチバルドはその非礼に怒る。アルチバルドが訪問したとき、カルロッタは愛人のアレハンドロ(ロドルフォ・エナンダ)と密会していた。その夜、カジノでパトリシアに再会したアルチバルドは彼女を車で送るはめになる。車中でも彼を誘惑する彼女に彼は殺意を抱き、剃刀で切り殺す幻想に浸る。果たして翌日、パトリシアは愛人のウィリー(ホセ=マリア・リナレス・リバス)に剃刀で切り殺された。アルチバルドは美術モデルで英語のガイドでもあるラヴィニア(ミロスラバ・ステルン)に出会い、魅かれるとともに殺意を感じる。彼女のくれた住所を訪ねると、そこは店で彼女そっくりのマネキンがあるばかり。アルチバルドはマネキンを作ったアトリエを教わり、彼女の住所を探り当てる。ラヴィニアは彼のモデルを勤めることを約束する。ラヴィニアが彼のアトリエを訪れ、アルチバルドは彼女そっくりのマネキンを使って機知にあふれた応対をする。だが彼が彼女に欲望を抱いたそのとき、ラヴィニアの連れていたアメリカ人観光客たちがアトリエを見学にやって来た。笑いながら観光客たちと帰っていくラヴィニア。アルチバルトは彼女のマネキンを窯にくべて燃やす。炎に包まれた彼女の顔はなんとも美しい。アルチバルドの頭の中は、例のオルゴールのメロディが響く。アルチバルトとカルロッタの結婚の日取りが決まるが、彼の元に彼女とアレハンドロの情事を知らせる手紙が来た。アルチバルドは手紙に書かれた場所で事実を確認し、殺意を抱いた。結婚式の祭壇の前で、純潔を破った彼女を射殺するのだ。だが結婚式の当日、記念写真の撮影中にカルロッタを射殺したのは、アレハンドロだった。自分の“犯罪歴”を語り終えたアルチバルドを、検事はただの妄想を裁くわけにはいかにと笑い飛ばす。アルチバルドは例のオルゴールを公園の池に捨てた。そこへラヴィニアがやって来る。二人は話し始め、腕を組んで楽しげに歩きだした。
Archibaldo De la Cruz
Lavinia
Patricia Terrazas
Carlotta Cervantes
Willy
Mrs.Cervantes
Alejandro
監督、脚本
脚本
原作
製作
撮影
音楽監督
美術
編集
字幕
[c]キネマ旬報社