浅野忠信
男
いまだかつて誰もメガホンを取らなかった4つの乱歩作品を実写化した「乱歩地獄」の中の1話。監督はPV&CM界のビッグネームである映像ディレクター・竹内スグル。出演は日本を代表する映画俳優・浅野忠信。
男(浅野忠信)は荒野を歩き続けている。歩いても歩いても、景色は少しも変わらず、あるのは乾いた大地と、どこまでも広がる鬱々とした空のみ。朦朧とした意識の中で歩き続ける男。ふと気づけば、目の前にぽっかりと沼が口を開けていた。吸い込まれるように沼の淵に立つ。その水面を覗き見れば、自分の体が恋人そっくりな白い女の肉体になっている。男の意識はかつて女と過ごした時間へと遡る。錯乱した男の爪は自身の身体に食い込んで、紅いかき傷を走らせていく。やがて沼の淵に倒れる男。彼は眠っているのか、それとも?
[c]キネマ旬報社