緒川たまき
母
明治の文豪・夏目漱石が1908年に発表した短編小説『夢十夜』を、10人の映画監督が映像化したオムニバス作品の第九夜。出征した父を思う母と子の姿と、意外な真実を描く。監督は「ゆれる」の西川美和。出演は「乱歩地獄」の緒川たまき、「ゆれる」のピエール瀧。
幼い坊と母(緒川たまき)を残して、父(ピエール瀧)は出征していった。夜、神社の境内に連れて行かれた坊は、母がお参りしている間、待っていなければならない。母は何度も手を合わせ、お百度を踏んでいるようだ。だが坊が拝殿の扉を開けて覗き込んでみると、そこには戦地の父の姿があった。坊は母を呼ぼうと、鈴の紐をつかんでガラガラと振り、さらに紐によじ登って鈴を鳴らす。しかし父は、本当に戦地で戦っているのだろうか。すでに死んでいるのではないか。どうやら母が何らかの理由で父を手にかけたらしいと、坊は察する。
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