ポーラ・ネグリ
Rachel
「鉄条網」「オレンジ実る頃」「三罪人」と同じくローランド・V・リー氏監督ポーラ・ネグリ嬢主演になる映画で原作はかつてネグリ嬢に「罪に立つ女」を執筆したエルネスト・ヴァイダ氏が書卸し、脚色は監督者リー氏自ら相当した。助演俳優は「紅白乱舞」のポール・ルーカス氏、「不良老年」のフィリップ・ストレンジ氏並びにニジェル・ドゥ・プリュリエ氏、リチャード・タッカー氏等で、カメラは「罪の街」「三罪人」等のヴィクター・ミルナー氏担当。
19世紀の中葉パリのフランス座に於いて古典劇役者として芸名を謳われた女優ラシェルの悲恋を描いたものでである。彼女は貧乏な行商人の末女として生まれ、長じてはパリの酒場等で門付けをしていたが、ある時国立劇場フランス座の舞台監督サムソンその非凡の芸を発見されて女優に取立てられたのだった。彼女はサムソンに師事して精進した結果一世の名女優として上下の称賛を受けた。銀行家ハルトマン男爵、名門のワレウスキ伯爵、新聞発行人で有名なヴェロン博士は中でもラシェルニ最も心惹かれた当時の名士で我先に彼女の愛を得ようとしていたが、ラシェルは彼等を巧みに操縦し利用するだけで決して心を許そうとしなかった。ある年パリのシーズンを打ち上げて地方巡業に赴いたラシェルが再びパリへ帰る途中、ふとした縁でラウール・デュランという青年と馬車に合乗りし月明の夜道をパリまで語り合ったが、それは彼女にとって最初の真剣な恋のあけぼのだった。その夜ラウールは名を打明けぬ恋人が女優ラシェルであったことをフランス座で発見した。そして閉場後二人はモンマルトルの遊園地で楽しい逢い引きをして堅い約束を交わした。しかし二人の結婚の前には余りに多くのそして余りに大きな障害があった。ラウールにもラシェルにもそれ等に打ち勝つに十二分な熱情はあったが、ヴェロン博士の武器はラシェルを屈せしめた。彼は二人が結婚すれば自分の新聞を利用してラシェルの女優としての生命を断つと共にラウールの外交官としての出世を妨げると脅迫した。そして博士にそれをするだけの勢力があることを知るラシェルは愛人の為に自ら恋を犠牲にすることを決心しラウールを袖にした。その日ラシェルはフランス座の舞台で身も心も悲劇のヒロインとして苦しみ泣き訴えた。そしてヒロインが舞台上に倒れて死んだ時に恋する女としてラシェルも倒れてしまった。
Rachel
Raoul_Durand
Dr._Veron
Earon_Harumann
Count_Walew ki
Samson
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