監督、脚本、撮影
「ディア・ピョンヤン」でベルリン国際映画祭最優秀アジア映画賞など数々の映画賞を受賞した在日二世ヤン・ヨンヒが、1970年代に行われた帰国事業で北朝鮮に移住した3人の兄と姪ソナの日常を追ったドキュメンタリー。近くて遠い二つの国で暮らす家族の姿を通して、可笑しくも切ない家族の愛情と絆を浮かび上がらせる。
ストーリー
大阪生まれの在日二世映像作家ヤン・ヨンヒの3人の兄は、1970年代に行われた帰国事業で北朝鮮に移住する。父によって当時“地上の楽園”とされた北朝鮮に送り出された兄たちが辿った運命とその胸に秘めた想い。自分の息子を送り出しながら、その後の思いもよらない状況に悔恨の念をにじませる父の心情とその病床の姿。そして北朝鮮に暮らす姪ソナの屈託のない笑顔と成長を温かい眼差しで見つめつつ、親子それぞれの姿を時に厳しい視線で捉える。選択の機会のない社会で育ったソナと、自由を謳歌しながら育った自分自身。二つの国に分かれた家族の生活を対比する一方で、思想や価値観の違いを超えた家族への切ない想いが浮かび上がる。また、北朝鮮と聞いて日本人が思い浮かべるのは、声高にニュースを読み上げるアナウンサーや、一糸乱れぬパレードとマスゲーム、もしくは隠し撮りされた極貧生活や脱北者の姿だろう。こうした扇情的なイメージばかりが先行し、庶民の日常生活が紹介される機会はほとんどない。本作ではホームパーティーや墓参り、結婚式、ボーリング場の賑わい、子供の登校風景など、庶民の日常を数多く収められ、そこで暮らす人々は我々とさほど変わらないことがわかる。中でも、母への思いを歌った北朝鮮の音楽を弾き語る姿には心動かされるだろう。