監督、脚本、撮影、編集
ドイツの原子力関連施設を3年間に渡って取材したドキュメンタリー。関係者インタビューは省き、現地を見学するかのような客観的な視点から、SF映画のような操作室、巨大な廃墟と化した原発やその解体作業など、普段目にする機会のない施設内部の様子を美しい映像で捉えている。ベルリン国際映画祭フォーラム部門で上映された。
ストーリー
カメラは様々な原子力関連施設の様子を捉える。原発の写真でしばしば見かける円柱状の巨大な建物は冷却塔である。これは自然通風冷却塔(Natural Draft Cooling Tower)と呼ばれ、巨大な煙突の下部に熱交換器を設け、空気の温度上昇による上昇気流で冷却する。高さ100mを超えるものも多い。グローンデ原子力発電所には煙幕発生装置が装備されている。テロ攻撃などに備え、起動させると容器の蓋が開いて煙のカートリッジに火がつき、高さ300mの煙が町全体を10分~15分覆うことができる。敵の目をくらます巨大煙幕のようなものだろうか。まるでSF映画のような制御室にある大きな安全盤。そこに設置されたランプや線は、各施設や放射線の量、蒸気・冷却水の流れをリアルタイムで表示している。原発の仕組みに関しては、ガラス製のモデルを用いて解説するとともに、米国のスリーマイル島原発やドイツのビブリス原発で起きた事故の原因も再現してみせる。原発には煙突に似た排気筒があり、建屋内を換気した空気や復水器(水蒸気を冷却し水に戻すもの)を真空にするために抽出した空気を排出する。グンドレミンゲン原発でプールの中に大量に貯蔵されているのが、使用済みの核燃料である。これらは冷却するために3~5年の間、貯蔵用プールに浸けられた後、青い容器(キャスク)に詰められて、さらに数十年保管される。従業員が着用している黄色やオレンジの作業着はナイロン製。したがって、アルファ線以外の放射線は貫通してしまうが、逆にそれを着て作業している場所は、さほど危険ではないということでもある。それとは異なる宇宙服のような防護服もあるが、これを着用しているということは、被ばくの危険性がある放射線管理区域で作業をしているということになる。このように、様々な光景を捉えた映像は、原子力に関して、我々に新たな知識をもたらしてくれる。
スタッフ
製作
スザン・シムク
製作
ヨルク・トレントマン
編集
シュテファン・クルムビーゲル
録音、整音
ニコラウス・ヴェルンレ
録音
フィリップ・フォルベルク
助監督
ステファン・ステファネスク
ライン・プロデューサー
ドロテア・ゼーガー
撮影助手
ティロ・シュミット
整音
ティム・エルツァー
字幕
西山敦子
字幕監修