監督、撮影、構成
2001年、映画監督を志して映画学校に在籍していた島田隆一監督が、渋谷で出会ったストリートミュージシャン、吉村妃里(よしむらひさと)の姿を追ったドキュメンタリー。渋谷で歌っていた頃の姿と、事情により歌手になる夢を断念して帰郷せざるを得なくなった彼女との9年後の再会を通じて、1人の女性の生き様を描き出す。
ストーリー
2001年の渋谷。“自分の居場所があるはずだ”と信じてやまない10代~20代前半の若者たちが、それぞれに雄叫びをあげていた。そして、9.11アメリカ同時多発テロの後も、それは変わらなかった。喧噪とノイズ。ひしめく人。そんな中、ひときわ異彩を放つ1人のストリートミュージシャンがいた。東京で歌手になることを夢見て、故郷の佐賀県からヒッチハイクでやってきた吉村妃里。当時20歳、映画学校の実習のテーマを模索中だった島田隆一とスタッフたちは、彼女の話を聞くうち、その魅力の虜となる。それから約半年間、夢中で彼女を追いかけて撮影が続けられた。しかし、吉村が突然、統合失調症を発症し緊急入院。やがて強制帰郷という結果になり、映画の制作は中断する。その後、監督を含めたスタッフは映画学校を卒業、撮影したテープは放置されたまま、それぞれの人生を歩み始めた……。それから9年。中断したままの過去。完成されるはずだった1本の映画。繰り返される未練と諦観。映画監督になると意気揚々としていた過去の自分に決着をつけるため、島田は再び吉村に会うことを決意し、彼女の故郷・佐賀へと向かった……。