世界200カ国近くでTV放映され、米国ピーボディ賞、ベルリン国際映画祭正式招待、ベオグラード国際ドキュメンタリー映画祭グランプリを受賞した「選挙」の第2弾。2011年の川崎市議会選挙に脱原発をスローガンとして、完全無所属で立候補した主夫の選挙活動を追ったドキュメンタリー。監督は、「選挙」の想田和弘。
ストーリー
山内和彦、通称・山さんは、2011年4月10日に投開票が行われる川崎市議会選挙の激戦区、宮前区の候補者の1人である。山さんは2005年秋、川崎市議会宮前区補欠選挙に自民党公認候補として立候補し、当選した。しかし、1年半の任期を満了してからは、3歳になる息子と一家の大黒柱である妻を支える主夫生活を送っていた。細かい字で政策がびっしりと書き込まれた山さんのポスターは、脱原発と“政治とカネ”の問題への思いが滲み出ている。山さんは選挙カーも使わず、事務所も借りず、ガソリンとポスターの公費負担を受けずに選挙活動を行う。保守的な政党は世間の声を気にして、選挙カーを走らせても名前の連呼などは自粛しているが、そのガソリン代は税金であると山さんは指摘する。自民党の市議候補者で、5年前の選挙のときには山さんを支援した浅野市議の活動を撮影していると、運動員が撮影を止めるよう求めてきた。浅野氏からは、前の選挙でも勝手に映画公開されたと言いがかりをつけられる。投票二日前の夜、選挙運動用法定ハガキを出すため、山さん一家が閉局間際の郵便局にやってくる。知人に宛名書きを手伝ってもらった三千数百枚でも間に合わず、最後まで夫婦で宛名書きをするが、制限枚数いっぱいまで出すことはできなかった。投票日前日、山さんは、最後の演説をするため各候補が集まる宮崎台駅前へ向かう。演説のため街頭に立つ持田氏にカメラを向けると、浅野氏との衝突を上回る攻防が繰り広げられる。山さんは、スーツの上に防護服とガスマスクを装着し、背中に放射線マークを貼ったいでたちで、別の候補者の演説が終わるのを待つ。演説は候補者同士で時間を決めて分け合っており、10分だけなら時間を割けると言われ、山さんは人通りの少ない駅の反対側で演説をすることに決める。立ち止まってくれる人などいないなか、山さんの最初で最後の街頭演説が始まる……。
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