野火|MOVIE WALKER PRESS
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野火

2015年7月25日公開,87分
PG12
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大岡昇平の同名戦争文学を「六月の蛇」の塚本晋也が監督兼主演で映画化。第二次世界大戦末期のフィリピンを舞台に、肺病を病んで部隊を追い出され一人彷徨う兵士の姿を描く。共演は「そして父になる」のリリー・フランキー、「蘇りの血」の中村達也、オーディションで選ばれた新人・森優作、「ギリギリの女たち」の中村優子、「童貞放浪記」の山本浩司。

ストーリー

※結末の記載を含むものもあります。

第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。日本軍の敗戦が色濃くなった中、田村一等兵(塚本晋也)は結核を患い、部隊を追い出されて野戦病院行きを余儀なくされる。だが負傷兵だらけで食料も困窮、少ない食料しか持ち合わせていない田村は早々に追い出され、再び戻った部隊からも入隊を拒否される。行き場を失い、果てしない原野を一人彷徨う田村。空腹と孤独、そして容赦なく照りつける太陽の熱さと戦いながら彼が目撃したものは、想像を絶する地獄絵図であった……。

作品データ

原題
Fires on the plain
映倫区分
PG12
製作年
2014年
製作国
日本
配給
海獣シアター
上映時間
87分

[c]SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER [c]キネマ旬報社

映画レビュー

3.5
  • たっかん

    2
    2016/8/14

    市川崑監督の「野火」を観たのが1982年4月、東京八重洲スター座だった。
    当時「エグイ場面がある」と聞かされていて観てみるとそうでもなかったが、“猿”を食べて命をつなぐ兵士たちが印象に残っている。

    この塚本晋也監督の作品でも、“猿”を食べるシーンはあるが、殺された兵隊たちのおびただしい死体がリアル過ぎて、ホラー映画的。

    また、“猿”を食べるというぼかし方でなく、殺した人間を直接食べる場面もあり、生々し過ぎる。

    塚本監督作品は、昔は好んで観ていたが、最近は自分が少し引いてしまう題材多い気がする。

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  • えこう

    4
    2015/9/9

    太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島を舞台にした
    「野火」が塚本監督の手によって再び映画化されました。
    豊岡劇場でも公開されて鑑賞してきました。

    昭和34年公開作、市川崑監督の野火や大岡昇平の原作は私は知らない。
    塚本晋也監督が戦後70年の日本社会に突きつける
    全身全霊の一作品が誕生しました。
    戦争の現実が一人の兵士の視点から極限の状況に置かれた敗残兵たちの様子をリアルに描かれていきます。

    舞台は第2次大戦末期のレイテ島。結核を患った田村1等兵は
    部隊からも野戦病院からも追い出され灼熱の原野をさまよいます。

    モノクロだった半世紀前の市川崑監督版と違うのは
    見る者の五感を揺さぶる生々しい戦場の描写。
    やはりカラーだと迫力がありますね。

    兵士たちは飢餓状態でやせ細り眼だけがぎらぎらと光る。
    南国の湿原に埋め尽くす泥だらけの日本兵、
    激しい機銃掃射によって引きちぎられる肉体、
    顔面にたかるヒルやウジ。折り重なる死体からは腐臭も
    漂ってきそうです。

    夜間にほふく前進する兵士たちが一斉に射撃される
    シーンでは田村の低い視界から見える地獄の世界が
    捉えます。

    どこから飛んでくるでわからない銃弾で手足や脳みそを
    吹き飛ばされる兵士たち。目を背けたくなるようなシーンの連続ですが、これこそが戦場の現実だったのかなあと。

    全編からみなぎるのは「今、伝えなければ」と自主製作に
    なっても踏み切った塚本監督の強い思いが伝わってきます。

    その思いにりりーフランキーたちが極限状態で崩壊していく
    兵士役の怪演で応えています。

    見る者の心には戦争という名の暴力がいや応なく刻まれます。

    70年前の「遠い日の戦争」そして二度と繰り返してはいけない。
    忘れてはいけない。

    塚本監督自身が製作、脚本、編集、撮影、そして主演をも務めているのも魅力です。

    製作のきっかけは高校時代に読んだ大岡さんの野火まで
    遡るという。こつこつと製作に携わってこられた
    熱い思いスクリーンを通して伝わってきます。

    戦争の怖さとともに、見てよかったし、見るべき作品
    でしょうね。

    戦争映画といえば、こうした兵士の側面からリアルに捕らえた作品は
    少なかったのでは。これは戦場の実態を突きつける
    素晴らしい作品でした。

    目を背けるんでなくて、しっかりと見て戦争のむごさを
    映像は教えてくれます。
    若い世代こそ見てほしいそんな作品なのでは。

    食料の補給経路も断たれ、椰子の実の根っこまで食べてつないでいった命、生きるために食べるのではなく、生きているから食べるというメッセージが強く強く心に響きました。

    終いには飢えから仲間を殺してその肉を餌食にしたという
    この事実には驚きます。それほど戦争末期の戦場は
    悲惨だったということは、あまり知られていないのでは。

    そうしたことにも向き合い描こうとした塚本監督。
    時として、やり過ぎではないのか!という声も聞かれた
    そうですが、戦争の愚かさを改めて突きつけられた作品
    になったと思います。

    これまでも戦争を伝える映画は数々作られてきましたが、
    戦争は絶対に起こしちゃあいけないということを、
    こんなにもダイレクトに伝えた作品はなかったと思います。

    ほんとにそういう意味でも今作が製作された意義は
    大きいと思います。あまりの衝撃に一滴の涙も出ないほど
    固まってしまいました。

    終戦から70年も経ちましたが、戦火に倒れていった幾万という兵士たちがいたっということを私たちは忘れてはいけない。

    クライマックスでは復員してきた田村が食を取るシーンが
    映し出されますが、その奇妙な動きは戦場のシーンと
    ダブって見えた。壊れてしまった田村の背中をじっと
    見つめる妻の存在感は秀逸である。

    ほんとに素晴らしい作品だったと思うし、こんな作品こそもっともっと上映されるべき作品でしょう。

    兵士たちがどんな思いで散っていったか、
    直視することが、今の世に遺された私たちの責務だと思います。

    「野火」素晴らしい映画が塚本監督の手によって
    この世に送り込まれたことが何よりうれしい。

    蝿がうじゃうじゃするシーンも
    空爆のシーンもゴオーと
    音はするけれど、あえて敵兵は写さない、そうした演出
    ひとつを取っても長けていましたね。

    最も戦没者を出したのがフィリピン戦。
    大半が飢えや病気による戦病死という惨状は映画「野火」
    に描かれた通りでした。

    米兵の息のある日本兵にタバコをくわえさせる
    シーンにもグッと心に届きました。

    70年前に何が起きたのか、戦争とは何なのかを考えるそんな作品なのではないでしょうか。

    塚原監督の伝えたかったメッセージをひとりでも多くの人に感じてもらいたいです。

    そして素晴らしい作品をこの世に送り出してくれた
    塚原監督に賛辞を贈ります。

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  • すすむA

    2
    2015/8/26

    大岡昇平作の『野火』(1951年)は戦争小説の傑作のみならず、日本文学における一つの金字塔ともいわれている。市川崑監督によって映画化もされ(1959年)、これも秀作だった。それから55年を経て、塚本晋也監督は何を描こうとしたのか。しかしその結果は惨めなものだったといわざるを得ない。

    監督自身がチラシに書いているように、なにより「お金がありませんでした」が、この映画を作る致命的な欠陥だった。借用できたロケ地が狭く、全てが同じ場所で撮影されたようだ。兵隊たちの移動距離が実感できず、従って時間の経過も読めない。その埋め合わせか、兵士たちのクローズアップばかりが、感情的に、執拗に強調される。

    何でこんなことを言うのかと言えば、『野火』で重要なのは移動だからである。敗残兵たちが無統制まま移動する群像を遠方から捉える冷徹なリアリズム的シーンと、長い距離を歩く間に語られる田村一等兵の「独白」が、物語に思想的な厚みを加え、それが大岡文学たらしめる。監督は自身が出演する田村一等兵に職業は「物書き」だと言わせているが、彼はおよそ知識人らしく見えない。

    それがないから、本映画のテーマは人肉を「食うか食わぬか」といったフェチシズム的な興味に駆り立ててしまう。哲学小説の卑近化、陳腐化だ。戦争の痛みを知らない「若い人をはじめ……多くの人に見てもらい」と書かれてるように、多分に「啓蒙」を意識して作った作品のようだが、おどろおどろしく、判りやすく撮れば良いというものではないだろう。

    戦闘場面も変だった。38銃は立派すぎるし、音と火花だけで表わされる米軍の機関銃だって、あの当時はあれほどの速射が出来たはずはない。アフガン戦争の映画から失敬してきたようなお手軽な音ではないか。

    監督には申し訳ないことだが、『野火』をきちんと撮るにはそれ相当に金がかかる。戦争は『野火』だけではない。資金的な貧しさが前面に出でてしまうあのように貧しい画像ではなく、他の斬新な視点からの「戦争」作品に取り組んでもらいたかった。

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