【今週の☆☆☆】胸を締めつける父娘のドラマ『足跡はかき消して』に感染症が蔓延した世界を描く『パーフェクト・センス』…週末観るならこの作品!

コラム

【今週の☆☆☆】胸を締めつける父娘のドラマ『足跡はかき消して』に感染症が蔓延した世界を描く『パーフェクト・センス』…週末観るならこの作品!

Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今週も、映画ライター陣が”いまこそ観たい”オススメ映画をピックアップ。社会問題を背景にした珠玉の人間ドラマや謎の感染症に知恵で立ち向かう人々を描いたパニック映画など、バラエティあふれる2作品がそろった!

週末に観てほしい映像作品を、MovieWalkerに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!
週末に観てほしい映像作品を、MovieWalkerに携わる映画ライター陣が(独断と偏見で)紹介します!

世間から“見捨てられた人たち”に光をあてる『足跡はかき消して』(Amazon Prime Videoほか配信中)

【写真を見る】PTSDに苦しむ父親ウィルを演じたベン・フォスター (『足跡はかき消して』)
【写真を見る】PTSDに苦しむ父親ウィルを演じたベン・フォスター (『足跡はかき消して』)[c] 2018 My Abandonment, LLC. All Rights Reserved.

動画配信サイトで観られる映画の中には「なぜ、これが劇場公開されなかったのか?」というハイクオリティな作品があるが、このアメリカ映画もその1本。オレゴン州ポートランドの広大な森の中で野外生活を送っている中年男と、その13歳の娘の運命を描くヒューマン・ドラマだ。戦争帰還兵である父親はイラクの戦場で負ったPTSDに苦しんでいる。そんな社会問題を背景にした本作は、世間から“見捨てられた人たち”に光をあてた作品であり、父と娘の絆を見つめた物語でもある。さらに注目すべきは、『ジョジョ・ラビット』(19)のユダヤ人少女エルサ役で一躍脚光を浴びたトーマサイン・マッケンジーが、それ以前に主演を務めた作品だということ。森で当局に拘束され、父と共に社会への順応を促されていく少女の自我の目覚めが描かれ、マッケンジーの無垢でまっすぐな演技に目を奪われる。そして父と娘のある決断を映しだすエンディング、その痛切な情感に胸を締めつけられる秀作だ。(映画ライター・高橋諭治)

“五感”を奪う感染症にさらされた世界『パーフェクト・センス』(Amazon Prime Videoほか配信中)

惹かれ合う男女に扮したユアン・マクレガーとエヴァ・グリーンがせつなくも美しい(『パーフェクト・センス』)
惹かれ合う男女に扮したユアン・マクレガーとエヴァ・グリーンがせつなくも美しい(『パーフェクト・センス』)[c]Sigma Films Limited/Zentropa Entertainments5 ApS/Subotica Ltd/BBC 2010

「完璧な感覚」と題された本作は、感覚を奪う感染症にさらされた世界を描いたイギリス生まれの異色のパニック映画である。ヨーロッパ各地で、突然嗅覚がなくなるという謎めいた症例が相次いで報告される。病はまたたく間に拡散し人類は“匂い”を失った。さらに味覚、続いて聴覚と人間は一つずつ感覚を奪われていく…。原因や仕組みが何も解明されないまま、次々に感覚をなくしていく人々。映画は、そんな状況下でも日常を続けようとする彼らの姿を追いかける。たとえばレストランは匂いや味の代わりに色や温度、食感で客に料理を楽しませ、ミュージシャンは音ではなく振動により楽曲を提供。街角には手話のポスターが貼られ、人々はサインやジェスチャーによって会話を取り戻す。SFよりファンタジーに近い本作だが、残された感覚を研ぎ澄ませ変化に適応していく揺り戻しの描写は実にリアル。知恵と工夫で希望をつなごうとするその姿に共感を覚えるだろう。“ウィズ・コロナ”が叫ばれる今日、より強く訴えかけてくる作品だ。(映画ライター・神武団四郎)

週末に映画やドラマを観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!

■『足跡はかき消して』
Amazon Prime Videoほか各配信サイトにて配信中
ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

■『パーフェクト・センス』
Amazon Prime Videoほか各配信サイトにて配信中
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