“サスペンスの神様”は変態?…ヒッチコックが映画好きを夢中にさせ続けるワケ
なかでも『めまい』(58)はヒッチコック監督とスチュアート主演のタッグによる集大成といえる作品だ。冒頭から怪しげな音楽をバックに女性の不安げな表情を映しだし、刑事として犯人を追う主人公のスコティ(スチュアート)が不慮の事故により同僚を目の前で亡くしてトラウマを抱える、という衝撃のシーンへと誘う。警察を辞めて悠々と暮らすはずだったスコティが、旧友の依頼をきっかけに出会った彼の妻、マデリン(キム・ノヴァク)にたちまち惹かれ…。死者の面影とトラウマ、幻想が交錯する本作は、それまでのヒッチコック監督作の小気味よいエンタメ的なサスペンスとは一線と画しており、観れば観るほど癖になるような複雑な魅力を放つ一作となっている。そのため劇場公開時は興行的にあまり振るわなかったものの、彼の死後30年以上経った2012年に発表された「映画批評家が選ぶ世界映画ベスト50」では数多の名作映画を抑えて第1位に輝くなど、頂点にまで昇りつめた。
これまで挙げた作品のように、ヒロインには一貫して金髪の女優を起用したヒッチコック。『めまい』の後半にスコティが新たに出会う女性に対し、かつて愛したマデリンの面影に近づけようと服装への異様なこだわりを押しつけ、髪をブロンドに染めるよう嘆願する様子を、ヒッチコックが女優たちに求めてきた美への執着に重ねて観る人も多いことだろう。1960年の『サイコ』はモノクロ作品であるものの、ジャネット・リー演じるマリオンのショートにした金髪が印象的。物語中盤にマリオンが殺められるシャワーのシーンは“サイコシャワー”とも呼ばれ、後世に語り継がれる名場面となった。
監督50本目の節目となる『引き裂かれたカーテン』(66)では、当時のスター俳優、ポール・ニューマンとジュリー・アンドリュースを迎えたアクションスリラーを手掛けるなど、晩年まで映画と向き合い続けたヒッチコック。BSプレミアムでは24日(水)に同作が放送されるほか、シネマヴェーラ渋谷では先述の『ロープ』など彼の初期作品の特集上映が7月3日(金)まで開催中だ。
記念イヤーとなるこの機会に、ヒッチコックが生みだした極上のサスペンスに酔いしれてほしい。
文/トライワークス
6月24日(水)13:00~ BSプレミアムにて放送
■「ヒッチコック監督特集」
会期:開催中~7月3日(金)
場所:シネマヴェーラ渋谷
■『めまい』
発売中
価格:Blu-ray 1,886 円+税、DVD 1,429 円+税
■『ロープ』
発売中
価格:Blu-ray 1,886 円+税、DVD 1,429 円+税
■『知りすぎていた男』
発売中
価格:Blu-ray 1,886 円+税、DVD 1,429 円+税
■『サイコ』
発売中
価格:Blu-ray 1,886 円+税、DVD 1,429 円+税
■『引き裂かれたカーテン』
発売中
価格:Blu-ray 1,886 円+税、DVD 1,429 円+税
発売・販売元は、すべてNBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン