【今週の☆☆☆】鬼才ペドロ・アルモドバル最新作『ペイン・アンド・グローリー』に世界各国の映画祭で絶賛された『はちどり』…週末観るならこの映画!
Movie Walkerスタッフが、週末に観てほしい映像作品を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今回は、6月19日から今週末の公開作品をピックアップ。鬼才ペドロ・アルモドバルと盟友アントニオ・バンデラスの黄金コンビによる人間ドラマや、思春期の少女の揺れ動く思いをつづった韓国映画など、話題の2作がそろった。
過去と向き合う映画監督がたどり着いた先は…『ペイン・アンド・グローリー』(6月19日公開)
ペドロ・アルモドバル監督と言えば、ビビッドな配色のビジュアルや、登場人物のやや突飛な状況に共感させる作りなど、独自の個性で映画ファンに愛されてきた。そのアルモドバルの「自伝的」とされるこの最新作。引退も頭をよぎる世界的映画監督の主人公が、かつての恋人やなき母への思い、少年時代のときめきと向き合うのだが、エピソードの数々はアルモドバルらしく鮮烈で赤裸々なのに、いつもの毒や過剰さは薄め。もう二度と時間を戻せないせつなさ、本音を言えない繊細さも意識したセリフや演出で、予想外な部分で感動させてくれる。盟友であるアントニオ・バンデラスが巨匠の哀愁を名演し、ペネロペ・クルスも思い出の中の母として美しく輝く。人生は何気ない一瞬こそ大切なのだと、限りなく優しいラストシーンが伝える珠玉の一本。(映画ライター・斉藤博昭)
“私らしさ”を探し始める少女の物語…『はちどり』(6月20日公開)
日本でも海外でも、14歳はまだ“本当の自分”がわかっていない微妙な年頃だ。韓国の新人女性監督、キム・ボラが自らの体験を投影した本作は、家族や友人との接し方に悩み、移ろいゆく日常の中で危うげに揺らめく少女の物語。観る者の甘酸っぱい記憶を呼び起こすエピソードがいくつもちりばめられている一方、主人公ウニの内なる孤独や脅えを表出させた映像世界には静かな緊迫感がみなぎる。あっけなく壊れてしまう人間関係、身近な人や大切な人の死。キム監督はそんな不条理な現実に押しつぶされそうになりながらも、耐えがたい心の痛みをこらえ、“私らしさ”を探し始めるウニの姿を見据えていく。しかも物語の背景となる1994年のソウルで実際に起こった出来事を取り込んだ本作は、ちっぽけな個人ととてつもなく大きな世界との向き合い方も提示する。並外れた豊かな感受性が息づき、スケールの大きさも感じさせる必見の一作!(映画ライター・高橋諭治)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/トライワークス