【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第22回 浄化したい。 |最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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コラム 2020/7/6 14:30

【連載】『松本花奈の恋でも恋でも進まない。』第22回 浄化したい。

【写真を見る】松本花奈監督の好評連載、第22回は「浄化したい。」
【写真を見る】松本花奈監督の好評連載、第22回は「浄化したい。」

「DVD&動画配信でーた」にて好評連載中の、注目の若手監督・松本花奈による日々雑感エッセイ「松本花奈の恋でも恋でも進まない。」。第22回は、自粛期間中、水面下で感じていたことについて。

第22回 浄化したい。

今誰もが感じているように、4月からの3カ月間で生活はガラリと変わった。キャンパスは封鎖されたようで夏までの大学の授業は全てオンラインとなり、その間予定していた撮影も、公開予定だった映画も、開催されるはずだった飲み会も、数年ぶりに海外から帰国する友人との再会も、そのほぼ全てが延期ないしは中止となった。

思えばここ数年、何だかんだ忙しい日々を送ってきた。いや、というよりかは忙しくしていないと自分が必要とされてないような気がして、そのきっと間違った焦燥感を埋めるために無理やり忙しくしていたのだ。

だが、予定されていた色々なものがなくなったからと言えど、何もなかったかと言われるとそうでもなく案外せわしない日々だったように思える。

4月はずっと脚本を書いていた。脚本を書く時は基本的にいつもカフェでやるのだが、お店もなかなかやっているところが少ないので、この間は知り合いの事務所の一角をお借りしていた。こんな時期なので来訪者もなく、事務所の家主と2人で特に会話も多くせず、ひたすら朝から晩まで黙々と書く毎日。そうして完成したウン十枚の初稿は我ながらなかなか良い出来では?と思っていた。

その初稿をもって、スタッフとのZoom会議が開かれた。もともと原作がある題材だったのだが、そこからはかなりの改変をしてしまっていたためその点においては少々不安があったが、案外すんなりクリアし全体的に面白いとの意見をもらえた。すごくうれしかった。脚本の話もそこそこにスケジュールの話に移る。だが、その時だった。

「ちなみに松本さん、今どこにいます?」とひとりのスタッフに聞かれた。「あ、えっと知り合いの事務所ですが」と答えると、彼は何ら表情を変えることはなく「家じゃないんですね」と言ってきた。ワンルームで二人暮らしをしているので、家だと集中できないこと、事務所には私含めて2人だけで、机も反対を向きお互いマスクをしていることなどを伝えた。その場は一応、「オシャレな背景だったのでどこかなー?って気になって聞いちゃいました」ということで収まったのだが、ところがどっこいまさかの展開。

翌日、彼から「今後一切、買い物へ行く時以外は外出しないと約束していただけますか?」とメールが届いた。もちろん、万が一を思っての気持ちであることは分かる。だが、「了解しました! 大変失礼しました」と返信しつつも正直、そこまで拘束される義務はあるのだろうかと思ってしまった。こういう水面下で感じている憤りを浄化できる日が早く訪れてほしいものだ。

文/松本花奈

松本監督が撮影したとある島の風景
松本監督が撮影したとある島の風景

●松本花奈プロフィール

東京少年倶楽部「flipper」のMV、みはゆん「綺麗になったよ」「一年半の僕ら」のMVで監督を務めた
東京少年倶楽部「flipper」のMV、みはゆん「綺麗になったよ」「一年半の僕ら」のMVで監督を務めた

1998年生まれ。映像監督。主な監督作に映画『脱脱脱脱17』('16)、『キスカム!〜COME ON, KiSS ME AGAIN!〜』(公開日未定)。演出で参加したAbemaTVのドラマ『僕だけが17歳の世界で』が配信中。