SNSでも共感の声が続々!誰もが“自分の物語”と感じられる映画って?
アクションやホラー、コメディにサスペンス…映画には様々なジャンルがあるが、それは映画に“刺激”や“非日常”を求める人が多いからだろう。だが、そんな人にもちょっと観てほしい一本がある。直木賞作家・重松清の同名小説を映画化したハートウォーミング・ムービー『ステップ』(公開中)だ。
本作の主人公は、結婚3年目、30歳の若さで妻に先立たれた会社員の健一。義両親の手助けを断り、2歳半になる娘・美紀と2人きりの新しい生活に挑戦することになった彼は、営業から時短勤務の可能な部署に異動し、仕事と子育ての両立に奮闘する。だが、そうそううまくはいかない。美紀が保育園デビューしてからも、小学校に通うようになってからも問題は次から次へと降りかかり、健一は何度もくじけそうになる。そして、ある事件によって父と娘の関係は壊れそうになり、彼らを見守ってくれていた義父も病に倒れてしまう…。
はっきり言ってしまえば、この映画には派手なアクションも、あっと驚くどんでん返しもない。ズバリ「普通の人の物語」である。「映画を観るときくらい日常のことを忘れたい」という人には敬遠されてしまいがちな題材だろう。しかし公開されてからというもの、SNSで「よかった」「泣けた」という絶賛が相次いでおり、「誰かに薦めたい」という声であふれている。いったいなぜなのか?
それは、脚本も務めた飯塚健監督が日常を温かく、丁寧に描出しているからにほかならない。生きていくうえで誰しもがつまづくような出来事、ごくありふれている些細なことを優しくすくい上げていて、必ずどこかに刺さってくる。たとえ男性でなくても、シングルファザーでなくても、いつの間にか健一に感情移入させられてしまう。劇中の物語が“他人ごと”で終わらないのだ。
公開に先立って開催された試写会でも「自身の境遇に重ね合わせた」という感想を寄せた観客が続出。「ストーリーがとてもリアルで、共感するポイントが多すぎて随所で泣きました。特にクライマックスは、涙で溺れてしまうかと思うほど泣いてしまいました」(30代女性/会社員)、「自分が病気した時は子どもが大きかったけれど、もしまだ小さい頃だったらと思うと…余計にうるうるしてたまりませんでした」(50代女性/主婦)、「妻が長らくガンで闘病していました。職場で肩身の狭さを感じながらも、学童保育の終わり時間までに仕事を終わらせないといけないというルーティンの毎日で…そんな自分の経験と重なる部分が多かったです」(50代男性/教員)など、映画を観ているうちに自身の日々のことを思い出してしまうはず。そしていつしか、さえない、ちっぽけだと思ってしまいがちな“自分の物語”も実にドラマチックなのだと感じられるようになるだろう。
あまり「泣ける」と繰り返すとよくあるお涙頂戴映画だと思われてしまいそうだが、それでも観終えたら、きっと爽やかな涙と温かく優しい気持ちに包まれていること間違いなし。先が見えず不安な昨今、毎日を懸命に生きているすべての人に、ぜひ観てほしい。
文/月刊シネコンウォーカー編集部