又吉直樹、『僕の好きな女の子』の渡辺大知を称賛!「永遠に僕のことを好きにならない状態が好き」と恋愛観も吐露
お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹による恋愛エッセイを映画化した『僕の好きな女の子』の初日リモート舞台挨拶が、8月14日によしもと有楽町シアターで開催。渡辺大知、奈緒、玉田真也監督、原作者の又吉が登壇した。イベントは無観客で開催され、その模様は新宿シネマカリテの観客席に同時中継された。
『僕の好きな女の子』の監督と脚本を担当したのは、演劇ユニット「玉田企画」の玉田真也。渡辺が、好きな人に好きだと告白できない青年の加藤役を、加藤が恋心を抱く自由奔放な美帆役を奈緒が演じた。
劇中で、奈緒とナチュラルな掛け合いを見せた渡辺。「今回の原作は、妄想を軸に語られているんですが、自分が意識したところでいうと、彼女とのやりとりが地に足のついた感じになればといいなと思いました。妄想のようでいて、実感の伴った、肌で感じられる妄想になればと」。
奈緒は「“僕の好きな女の子”なので、私はなにもしないほうがいいのかなと。いつもは主観的に考えるのですが、今回はあまり主観が入りすぎると、加藤さんから見た客観性が崩れてしまう。美帆がどう思っているかをなるべく考えないようにしてお芝居をしました」とコメント。
又吉は2人について「完璧なキャスティング」と太鼓判を押す。「渡辺さんのお芝居を観ていて、めちゃくちゃ苦しくなったこともあるし。妄想もあるけど、心あたりのある感情もあったりするので。頑張れ、頑張れ、イケる、イケると思いながら加藤を見ていました。奈緒さんも、ところどころ、本当の部分が一瞬垣間見えるところがあって、そこがすばらしかった」。
奈緒は「うれしいです。ずっと又吉さんとお話する機会がなくて、『これは僕の好きな女の子じゃない』と思われてたらどうしようと。安心しました」と胸をなでおろした。
玉田監督も2人について「役者として、相性がすごくいい気がする。違うタイプだけど、絶妙に噛み合うというか、噛み合ってないことで噛み合うみたいな、いい2人だなと思いました」とうなずいた。
また、又吉は自身の恋愛観について「加藤に近いです」としながら「僕の好きな人は、永遠に僕のことを好きにならない、その状態が好きっていう変態なんです。俺のことを好きじゃないなというのを見て、より一層その人のことを好きになる。すごい苦しいんですが…」と言って、マスコミ陣を少しざわつかせた。
さらに恋愛が成就した場合についても、又吉は「本当の意味で俺のことを好きじゃないなとか、全然ハマってないなとか、『こういう人が嫌い』って彼女が言ってるのを聞いて、俺やなと思ったり。難しいけど、そういう部分があります」と告白。
好きな人には告白するタイプだと言う渡辺は、又吉の弁を受けて「すごくわかるけど、わかるからこそ、そうならないように動いちゃってるところがあるかも。そういうのに憧れている側かもしれないけど、そういうふうにできるメンタルを持ってない。それを楽しむ心の余裕はないので」と苦笑いした。
最後に渡辺は「この映画は人と人との距離感の測り方というか、想いを伝える時の言葉をあれこれ考えるような作品になっていると思います。いま、実際に観ていただいた方とは、かなり距離が離れていますが、それでも想いの伝え方はあるよなと。いまのこの時代に、自分が信じている人、信じてほしい人に、どういう言葉をかけられるかを考えるきっかけになればと」と、コロナ禍においてのメッセージをしっかりと放ち、舞台挨拶を締めくくった。
取材・文/山崎伸子