渡辺大知と奈緒、玉田真也監督が考える『僕の好きな女の子』における恋愛の正解と不正解
映画『僕の好きな女の子』(公開中)は、「友だち以上恋人未満」というよくある愛の構図を、“最上級”の関係性に昇華させた珠玉のラブストーリーだ。原作はお笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹による短い恋愛エッセイ。演劇ユニット「玉田企画」の玉田真也監督が、原作の行間を見事に膨らませた脚本を書き、主演に渡辺大知、ヒロインに奈緒を迎え、みずみずしい愛をつむぎあげた。そこで渡辺、奈緒、玉田監督を直撃し、製作秘話について聞いた。
脚本家の加藤(渡辺大知)は、大好きな女友達の美帆(奈緒)に振り回されっぱなしだ。美帆にいつ呼び出されても、喜んで会いにいくし、彼女がどんな突飛な行動に出ても、すべてが愛おしく思える。美帆といる至福の時間をなによりも大切にしている加藤は、胸に秘めた恋心を美帆に打ち明けられずにいるが、美帆は加藤の気持ちにまったく気づいていない。ある日、加藤と美帆、彼女の新しい恋人の城戸(仲野太賀)と3人で会うことになる。
「恋愛にならなくても、2人の関係性は正解なんじゃないかと」(渡辺)
――最初に玉田監督の脚本を読んでみた感想から聞かせてください。
渡辺「なんてことない日常の自然な会話のなかに、信頼し合っている男女の関係性がひしひしとわかる言葉が散りばめられていました。加藤がちょっと行動を起こすだけで、物語はまったく違う展開になりそうなのに、彼は敢えてそれをしない。すごくせつないし、ハラハラしつつも、なんだかもどかしい気持ちになる脚本だなと思いました」
奈緒「私も、最初は加藤さん目線で脚本を読んだんです。加藤さんから見たら、美帆ってどういう子なんだろう?と、客観的に美帆を見ていくなかで、彼女に共感する部分もありました」
――どんなところに共感しましたか?
奈緒「もしかして美帆も、違う誰かの前では、加藤のような立場なのかもしれないと思ったんです。でも、片想いをしている時間はすごくキラキラしてて、なんだか愛おしいなと思いました」
渡辺「加藤の気持ちはわかるんだけど、そうじゃないだろう、ここでもっと行けよ!というのが観客の目線ですよね。ただ、加藤は口下手だから美帆に想いを伝えられないのではなく、美帆との関係性を大事にしたいがゆえに、この関係を崩したくないのかなと」
――渡辺さん自身もそういう経験をしたことがありますか?
渡辺「僕ならガンガン行きます(笑)。思ったことは、わりとすぐ口に出すほうだし、そもそも悩む時間が短いタイプなんです。だから、加藤を演じるにあたり、すごく考えました。でも、恋愛にならなくても、2人の関係性は正解なんじゃないかと。もちろん、恋愛にもっていけたらベストなんでしょうけど」
玉田「劇中で、加藤が大学時代の友達から、美帆との仲について『なに、その関係?』と批判されますが、それもおかしな話だなと。確かにあの2人を見た時、一般的には恋愛関係になるのが正解、みたいな価値観があると思います。でも、大知くんの言うように、そういうことでもないよなと。加藤は、そういう一般論のせいで葛藤していますが、僕もあれはあれで肯定してもいいのかなと思ったりします」