「新恐竜」を描きだす!今井一暁監督&服部隆之が明かす『映画ドラえもん』の舞台裏
服部「スタッフ全員が『久利生だ!』って言ってました(笑)」
――作品の内容についてお聞きします。「映画ドラえもん」の第1作となった『のび太の恐竜』や、声優入れ替え後の最初の作品となった『のび太の恐竜2006』など、“恐竜”はドラえもんにとってターニングポイントとなる題材。今回はどんなきっかけで恐竜を題材に選ばれたのですか?
今井「たしか『宝島』の初日に『またお願いしますね』と言われまして、藤子プロの方から『2020年は恐竜をやりたい』というお題を先にいただきました。そこでどんなお話を作っていくかと、川村さんと悩むところから始まりましたね」
――過去の“恐竜”との差別化はどのように?
今井「過去の作品はあまり意識していなかったんです。でも今回のストーリーを考えていく上で、土台自体は『のび太の恐竜』を使おうという話になったんです。化石を拾って孵化させるという骨子はそのままに、生まれてくる恐竜がピー助でなかったらどうなるんだろうと。そうしたら話の方向性がどんどんオリジナリティあるものに変わっていった。いまでは藤子先生が原作を描かれていた時代と恐竜に関する情報も大きく変わっているので、それも入れ込んでいくうちに物語の流れができていったわけです。でも正直『恐竜2006』は意識せざるを得なかったですね…。渡辺歩監督のことを尊敬していますし、同じことをやっても勝てない。10年以上経っていても、きっと比べられるだろうとちょっと尻込みしていました」
――服部さんは、“恐竜”を題材にした音楽をこれまでやられたことは?
服部「恐竜は経験がなかったです。近いものなら『ゴジラ』がありますけどね(笑)。でも恐竜の音楽といえば、やはり『ジュラシック・パーク』がまずあって。やっぱりジョン・ウィリアムズってすごいんですよ、あの人が書く音楽は教科書のようになる。すっかりジョン・ウィリアムズに手のひらで転がされてる気もしてしまうぐらいです。今回の音楽は、スケール感を出しながら、のび太とキューの関係性を表す曲をどういうハートウォーミングな雰囲気に落とし込むかが僕にとってのカギでした」
――これまで服部さんの担当された作品を振り返ってみると、今回のゲスト声優に木村拓哉さんが選ばれたのは運命的ですよね。
服部「たしかに(爆笑)。木村くんがやったジルと、渡辺直美さんがやったナタリーが登場する時に必ず流れる曲があるんですが、最初に聴いてもらった時に、スタッフ全員が『(「HERO」で木村が演じた)久利生だ!』って(笑)。実際のところ、『HERO』と『華麗なる一族』と『宮本武蔵』の3本しか木村くんの作品はやってないんですけど、彼の演技と僕の音楽のマッチングが皆さんの記憶に残っているというのは嬉しいことですね」
――木村さんの演じるジルは、最初に発表されたデザインではサルの姿をしていたので、かなりインパクトありましたね。
今井「そうですね(笑)。でも、ジルはポーズなどもとてもかっこいいんです。出演が決まってからは木村さんが演じると思いながら描いたていたので、無意識にそういう芝居になっていったんだと思います」
――ありがとうございました。次にお二人が組まれる機会を楽しみにしています!
今井「はい、僕もそう願っています」
服部「呼んでいただけなかったら寂しいな(笑)」
今井「もちろん!僕は迷わず服部さんにお願いしますよ!」
取材・文/久保田和馬