石橋静河、15歳で訪れた転機「危機感を覚えて飛びだした」ひたむきな女優道のスタートラインとは?

インタビュー

石橋静河、15歳で訪れた転機「危機感を覚えて飛びだした」ひたむきな女優道のスタートラインとは?

「お芝居って、なんておもしろいものなんだろう」

【写真を見る】石橋静河、柔らかな笑顔も魅力的!
【写真を見る】石橋静河、柔らかな笑顔も魅力的!撮影/野崎航正

その決断は、想像以上のものを石橋にもたらした。実際に飛び出した先では、「最初は戸惑いだらけ。すごく辛くて、孤独でいっぱいだった」と振り返る。

「家の近所のことしか知らなくて、学校も家の近く。友達もずっと同じ場所で育っているというところから、突然、知らない国で、知らない言葉を話す人たちに囲まれて、自分で主張しないといけないところに行ってしまって。誰だって、言葉の通じない人と話すのはつまらないから、こちらから話しかけないと誰も相手にしてくれない。会話を続けてもらえるように、いつも疑問形で話しかけたりして。相手にとっては面倒臭い人だったかも」と笑い、留学の最初の2年は「ずっとホームシック。2年目くらいに、やっと友達ができた」と述懐。

「わがままだった」という彼女だが、孤独と向き合い、視野を広げて心も磨いた。「留学するのにもお金がかかるし、当時はわがままだなとも思いました。そして孤独だと思っている時にも、助けてくれる人がいたり、優しくしてくれる人がいて。一人の友達ができるだけで、すごくうれしいこともわかった」。

「もっとおもしろい作品、もっとおもしろい人たちに出会いたい」
「もっとおもしろい作品、もっとおもしろい人たちに出会いたい」撮影/野崎航正

さらには「留学時にコンテンポラリーダンスに出会って。自由な表現ができることに魅了されました。表現することっておもしろいなと思っているころに、ニューヨークでストレートプレイの舞台を観る機会があって。それが本当に素晴らしくて」とうれしい出会いがあった。

俳優の石橋凌と原田美枝子を両親に持つ彼女だが、「それまでの私は、お芝居というと親がやっているもので『親の七光とも言われてしまうから、やらない』と小さなころからずっと言っていたんです。でもそういう気持ちを取っ払ってお芝居に触れた時に、『なんておもしろいものなんだろう』と思った。どんどんお芝居への興味が湧いてきて。いまではもっとおもしろい作品、もっとおもしろい人たちに出会いたいと思って続けています」と女優として歩む力までをもらい、「留学していなければ、お芝居の世界には絶対に入っていないですね。その時の自分に『ありがとう!』と言いたい」と輝くような笑顔を見せる。

「中村倫也さんはものすごく柔らかい方」

2017年の『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』では、彗星の如く映画界に現れた石橋が、現代の東京を生きる不器用な女性の心情を体現。ブルーリボン賞をはじめ、数々の新人賞を受賞した。その後も『きみの鳥はうたえる』(18)、『いちごの唄』(19)でヒロインを務めるなど、「もっとおもしろい作品、おもしろい人たちに出会いたい」という願いをかなえ続けている。

紅子の存在が、蒼山に変化をもたらす
紅子の存在が、蒼山に変化をもたらす[c]2020「人数の町」製作委員会

人数の町』では中村倫也と初共演を果たし、「ものすごく柔らかい方」と印象を明かす。「ちょっとした変化も『ヨッ!』と受けてくれるんです。こちらがなにをやっても受けてくれる包容力があるので、一緒にお芝居をしていてとても楽しかったですね。お芝居って、まずは台本を読んで頭で理解するんですが、現場では頭で考えた通りにはならない。中村さんは、そういった自分の想像したものとは違ったものが返ってくるということを、すごくおもしろがっている感じがする」。

蒼山と紅子の突然のキスシーンも印象的だ。石橋は「突然すぎるキスですよね!」と笑顔を弾けさせ、「紅子が急に自分からキスをする。そのシーンでも、どんなことになっても中村さんはおもしろく受け止めてくれるだろうという安心感がありました」と現場で起きる化学反応を、彼女も大いに楽しんでいる。

現在26歳となり、「素敵な作品にたくさん出会えて、私はすごくラッキー」としみじみ。留学経験で培った強さも魅力的だが、「役者業は、どんな作品に何歳で出会うのか、どうやってステップアップするのかなど、プランを立てることができない仕事。いつなにがあるかわからないし、『いま、この作品がおもしろいと思う』『いま、おもしろい人に出会えてうれしい』と感じることをつなげていくことで、進んで行くしかない。目の前にあることを一生懸命にやれば、きっと次への扉が開けていけると信じてやるしかないし、わからない道を行くのもおもしろいですよね」と、しなやかな姿勢もなんとも素敵だ。「もしその道が期待した結果にならなかったとしても、自分のなかではきっと変化が起きるはず。それが大事だと思っています」。

取材・文/成田おり枝

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