セックス・ピストルズ、ストーン・ローゼズに迫った作品も…「UNDERDOCS」に知られざるドキュメンタリーが集結
ピストルズのアメリカツアーを捉えたドキュメンタリーに鬼才ジム・ジャームッシュ監督作をピックアップ
旧作からも様々な人気バンドに迫ったドキュメンタリーがラインアップされている。『D.O.A.』(81)は、1970年代末に吹き荒れたパンク・ムーブメントの中心であり、世界で最も過激だったバンド、セックス・ピストルズの活動にフォーカスした作品。ピストルズによる初のアメリカツアー(1978年1月5日のアトランタから同年1月14日のサンフランシスコでの最後のライブまで)を中心に、デッド・ボーイズ、シャム69、ジェネレーションXなど、当時絶頂期を迎えていた複数のバンドの姿も追ったパンク・ドキュメンタリー映画の最高傑作だ。
ジム・ジャームッシュが監督を務めた『ギミー・デンジャー』(16)も登場。ジャームッシュ自身が熱烈なファンであることを公言している、過激なライブ・パフォーマンスが特徴のイギー・ポップ率いるバンド、ザ・ストゥージズのこれまで語られてこなかった軌跡が綴られる。ジャームッシュ監督作『デッドマン』(95)、『コーヒー&シガレッツ』(03)で役者として起用してきたイギー本人からの「俺たちストゥージズの映画を撮ってほしい」というオファーで実現した。
マッドチェスター・ムーブメントの中心的存在として全世界の音楽シーンに多大な影響を与えたザ・ストーン・ローゼズの、1996年の解散から15年後の2011年10月18日、再始動したバンドの活動を記録した『ザ・ストーン・ローゼズ:メイド・オブ・ストーン』(13)。サッカーと音楽しか成り上がる手段がなかったマンチェスターのワーキングクラス出身の4人による感動的な再会劇から、初めて明かされるその裏側、そして彼らを人生の一部として愛するファンの素顔を、再結成にまつわるライブやバックステージ映像、これまで未公開だった秘蔵映像を軸に鮮烈に描きだす。
このほか、昨年惜しくも逝去した天才ダニエル・ジョンストンを描いた『悪魔とダニエル・ジョンストン』(05)が14年ぶりに、おびただしい数のバンドをフィーチャーしたハードコア巨編『AMERICAN HARDCORE』(06)が9年ぶりに日本で上映。さらに、2006年にシアターN渋谷で3回のみ上映されてその姿を消した『ミニットメン:ウィ・ジャム・エコノ』(05)に、奇妙奇天烈な出で立ちで摩訶不思議な音楽を奏でる覆面アーティスト、ザ・レジデンツの結成40 周年ツアーに密着した『めだまろん/ザ・レジデンツ・ムービー』(15)。
のちのハードコア・シーンに大きな影響を与えたバンド、マイナー・スレットのイアン・マッケイが80年代後半に結成したFUGAZIの我が道を行くパンク精神に迫った『INSTRUMENT フガジ:インストゥルメント』(03)といった好奇心をそそる作品がそろう。
また、ドキュメンタリーばかりでなく、昨年末に日本で公開され話題を集めた『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』(18)をはじめ、『ジャームス 狂気の秘密』(07)、『スパイナル・タップ』(84)といったタイトルも。メタルやロックバンドをフィーチャーした劇映画も楽しむことができる。
まさに音楽ファン、ロックファンのための企画と言える「UNDERDOCS」。新作はもちろん、公開当時に観逃した作品があれば、ぜひ劇場へ足を運んでみてほしい。
文/平尾嘉浩(トライワークス)