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“コワモテ”俳優、ヴァンサン・カッセルの新境地?『スペシャルズ!』で社会福祉に取り組む男を演じる

コラム

“コワモテ”俳優、ヴァンサン・カッセルの新境地?『スペシャルズ!』で社会福祉に取り組む男を演じる

ヴァンサン・カッセルがブリュノ役を引き受けた理由とは?

ブリュノ役にカッセルを選んだ理由について、トレダノ監督は「ヴァンサンは、その人物になりきって身振りや体つきまでも“盗む”という姿勢で臨む。僕らは、彼のその“変幻自在”の才能を本当にすばらしいと思っている」と説明。出演を決めたカッセルも「みんな僕の悪役とか意地悪な役ばかり覚えているんだけど、なんでだろう(笑)。いろんな役柄をやってきたつもりなんだけど…」と自身のパブリックイメージを自虐気味に捉えつつ、「“これは僕の新境地だから引き受けよう”とはいっさい考えない。その仕事に興味があるかどうかだけだよ。今回は、(監督の)エリックとオリヴィエと一緒にやることに興味があった。彼らは役者の人間味を引きだしてくれるので、自分が彼らの手にかかったらどうなるだろうということにすごく関心があったんだ」と振り返り、監督たちへの高い信頼を示している。

【写真を見る】ヴァンサン・カッセルが自閉症の子どもたちを支援する実在の人物を好演
【写真を見る】ヴァンサン・カッセルが自閉症の子どもたちを支援する実在の人物を好演[c]2019 ADNP - TEN CINÉMA - GAUMONT - TF1 FILMS PRODUCTION - BELGA PRODUCTIONS - QUAD+TEN

対象の立ち居振る舞いや人間性も演技に取り入れる

今回、ブリュノを演じるにあたって、モデルとなったステファン・ベナムとも交流を持ったカッセル。一緒にドライブに行くなど、同じ時間を共有したようだ。
「ステファンの立ち居振る舞い、人間性を観察した。演じる時には、登場人物の持ち味を出すことが大事だからね。彼の個性を知るのは大切なことだった。具体的には、彼のヤギ髭と目線を取り入れた。彼は相手が落ち着つかなくなるからと、あまり人と目を合わせないんだ。それから、心配そうな表情もね」

マリクのもとで働く新人職員で遅刻クセのあるディランとブリュノ
マリクのもとで働く新人職員で遅刻クセのあるディランとブリュノ[c]2019 ADNP - TEN CINÉMA - GAUMONT - TF1 FILMS PRODUCTION - BELGA PRODUCTIONS - QUAD+TEN

実際に接してみて感じたステファンの人間性についても「彼に会って一番感じたのは“謙虚さ”だ。すごく繊細で、慎み深い、相手のことを思いやる、ポジティブな印象しかなかった。リサーチで彼の施設にも足を運んだ。自閉症について知らないことだらけだと衝撃を受けたよ」と語っており、得難い経験だったことがうかがえる。

左から、マリク役のレダ・カテブ、エリック・トレダノ、カッセル
左から、マリク役のレダ・カテブ、エリック・トレダノ、カッセル写真:SPLASH/アフロ

本作についてカッセルは「この作品は自閉症についてだけはなく、人と違うということを受け入れる大切さ。一人ひとり違うけれども、一緒に生きていこうというメッセージが入っていると思うし、もっと寛容になろうというテーマも入っている」と説明している。不寛容や不安が広がる現代社会において、劇中でブリュノたち示す誠実さが、大事なことを改めて気づかせてくれる。

文/平尾嘉浩(トライワークス)

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