草なぎ剛と水川あさみ「愛は理屈ではない」『ミッドナイトスワン』に込めた愛

インタビュー

草なぎ剛と水川あさみ「愛は理屈ではない」『ミッドナイトスワン』に込めた愛

「愛って一番大事だけど、一番難しいなと思いました」(水川)

娘にネグレクトしてしまう母親役を演じた水川あさみ
娘にネグレクトしてしまう母親役を演じた水川あさみ撮影/黒羽政士

凪沙は、一果と暮らしていくうちに、ふつふつと母性愛に目覚めていくが、草なぎは、服部の演技を見ているだけで、凪沙の気持ちとシンクロしていったと言う。「樹咲ちゃんが、本当に一果として生まれ、田舎から出てきた子のように思えて、すごく愛おしくなっていきました。でも、バレエを踊る時は、まったく違う彼女になっていたので、本当に感動したし、驚かされました。だから、ちゃんと凪沙として、『この子からバレエを取り上げちゃ駄目。可能性を絶やしてはいけない』と思えたんです」。

茶髪に染め、そばかすをつけて早織役に挑んだ水川あさみ
茶髪に染め、そばかすをつけて早織役に挑んだ水川あさみ[c]2020「MIDNIGHT SWAN」FILM PARTNERS

実母役の水川も、服部との共演シーンを振り返り「私は、一果を叩いたり、怒鳴ったりと、アクションをぶつけるシーンが多かったのですが、常に彼女が一果としていてくれたので、すんなりと入れました」と感心しきりだった。
「樹咲ちゃんはすごく存在感がある。例えば、台詞をぼそっと言う時も、彼女は彼女なりにすごく考えて、正解を探そうと必死になっていたんですが、もう現場の雰囲気だけで成立していました。監督はそこも見越して、キャスティングされたのかなと」。

草なぎが「一果香が同級生の女の子とキスをするシーンも、少女ならではの透明感がすてきだった」と言うと、水川も「すごく良かった。鳥肌が立ったし、ぐっときちゃいました」と服部を称えた。

また、本作で凪沙を演じたことで、「人を想う気持ちって大事ですね」としみじみ思ったと言う草なぎ。「人を好きになることって、場合によっては、すごく勇気がいることもありますが、そうやって誰かを大切に想う気持ち自体が大切なんだなと、つくづく思いました。また、100人いたら100通りの愛し方があるんだなと」。

『ミッドナイトスワン』は、9月25日(金)より全国公開
『ミッドナイトスワン』は、9月25日(金)より全国公開[c]2020「MIDNIGHT SWAN」FILM PARTNERS

水川は母性について、愛情表現について「私は子どもがいませんが、母性って、自分の子どもだけに対するものではなく、動物も含め、なにかを守りたいという想いなのかなと。ただ、この映画を観た時、愛情を表現することって難しいなと思いました。凪沙のあふれ出てくるような母性は、周りにいると伝わってくるけど、私の演じた母親は、娘を愛しているのに、そこを上手く表現できないという不器用さもある。同じ愛なのに、表現の仕方で、相手への伝わり方が変わる。愛って一番大事だけど、一番難しいなと思いました」と感じたそう。

本作は、愛とはなにかという、普遍的な価値観を投げかける作品となっていると言えそうだ。
草なぎはこう語る。「凪沙は決して、特別な人間ではないんです。自分の子どもでもない人間に、ここまで愛情を注ぐことは、間違った愛なのかなと思ってしまうかもしれないけど、人が人を求め、好きになるのは、理屈では言い表せないものなのかなと。僕はそこがぐっと来ました。それを、画面を通して上手く届けられたらいいなと思っています」。

※草なぎ剛の「なぎ」は弓へんに前の旧字体、その下に刀が正式表記

取材・文/山崎伸子

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