「映画業界を夢のある場所に」山田孝之&阿部進之介「MIRRORLIAR FILMS」“ウラ独占座談会”を敢行
「“変化”って、常にどこでもあるもの」(山田)、「表現は、自由」(伊藤)
――プロジェクトでは“若い世代の支援”にも力を入れていますよね。一般公募作品からどのような人材がでてくるのかも非常に楽しみです!募集テーマの“変化”は、どのような経緯で決まったんですか。
山田「(考え込んで)うーん」
伊藤「これね…」
関根「案はいろいろ出たんです、“愛”とか。でも、作品の方向性が固まり過ぎてしまうという懸念があって…」
山田「そうなんです。最初は『“自由”でいこう』という話になったんですけど、何人かの撮影監督から『テーマが広すぎると、なにをやっていいか分からない』という声があがったんです。ただ、テーマって決め過ぎるとそこに縛られて、せっかくのオムニバスなのに幅がなくなってしまう。そこで、ハッキリ言いますと…『あるようで、ない』テーマにしました(笑)。“変化”って、常にどこでもあるものなので」
一同「(笑)」
山田「でも、おもしろいのは、例えば新作ではなくて10年前に撮ったショートフィルムを応募してもいいんです。YouTubeとかSNSにずっと眠っていて、お金にもなっていないような作品もちゃんとすくい上げたいという想いから、製作年数をあえて定めていないので。そういった時に、テーマが“変化”となると、あとはもう“プレゼン力”。『ここは登場人物のこういった変化を描いているんです。だから今回の企画にぴったりだと思いました!』ってプレゼンをして、こちらが納得すればオッケーなわけですから。それも、映画を作っていくなかで、とても大事なことだと感じています」
――世界中どなたでも応募できるというのも、すごいことですよね。
山田「職業も年齢も、国籍も宗教も関係ないです!だれでも応募できますから!」
伊藤「表現は、自由なものですからね」
――そんななかで、山田さんと阿部さんは今回監督も務められますが、意気込みのほどは…?
阿部「撮ってみて気づくことも多くあるでしょうけど、なにもないものをゼロから作るのが僕はすごく好きなので。これから自分が作る映画が世の中に生み落とされるというのは、すごくワクワクしますね」
――山田さんは竹中直人さん、齊藤工さんと共に監督を務められる『ゾッキ』に続いての監督作ですが。
山田「まあ、好きなことをやろうと思います。36作品もありますし、みんなそれぞれ好きなことをやると思いますよ。でも僕と阿部ちゃんは委員会メンバーなので、賞金はどうせもらえないんですよ…(苦笑)」
関根「それ毎回言いますよね!本当はもらいたいの、あるんじゃないの(笑)?」
山田「500万円だぞ!欲しいよ(笑)!」
関根「会議とかしてると、すぐそれ言うんですよ!」
山田「どうせ賞金もらえないんだったら、好きなことやってやるよ!」
阿部「実は途中で気づいた?『あれ、俺たちはもらえないじゃないかよ』って(笑)」
伊藤「もしかしたら、MOVIE WALKER PRESSさんも狙ってるかもしれないですからね(笑)」
小金澤「どなたでもチャンスがありますから」
松田「(編集部に)この座談会動画をこのまま作品として出されたら、どうするの⁉」
山田「表現は自由…とはいえ、これを使うんだったら、ちゃんと僕たちにギャラを払ってもらわないと…(笑)」
――コロナ禍で、世界中の映画界の状況が変わってきています。今後の「映画の作り方」「映像のあり方」について、それぞれの立場でどう思われますか。
関根「僕は映画業界の人間ではないですが、一般の方は映画を作ろうと思うと、『すごい機材が必要なんじゃないか』とハードルを感じると思うんです。ただ、今回の打合せの時に、『iPhone1台あればみんな映画を撮れる、作れるじゃん』と聞いて『あっ、確かにいまの時代そうだな』と。機材しかり、撮る手段はたくさんあるというのが僕が最近気づいたことです。なので、いまの状況だからというよりも、『もうそういう時代になっているんだよ』というのが伝わればいいなと思っています」
伊藤「映像文化は人を豊かにするものなので、絶対になくならないと思います。かつ、今回山田さんや阿部さんも監督されますが、映像をいろんな人が撮りやすく、自己表現や自分がおもしろいと思ったものを発表しやすい時代になっているなと感じています」
山田「戦争もそうですし、どんな時代でも、いろんなことが世の中で起きるわけじゃないですか。さらにテクノロジーも進化する。そのなかでどういうものを作るか、それがどのように観られるか、どういう環境で観るのかは、常に変わり続けているもの。なので、確かに少し前といまでは状況が違いますけど、そこまで振り回されず、とにかく表現というものをなくしてはいけない。なくならないとも思うし、それをサポートしていきたいという気持ちですね」
阿部「いまオンラインで映画を公開したりしていますけど、たまたまそれが加速しただけで、時代の需要としては、すでにそういうところにきていたと思うんです。それで残るものは残るし、残らないものは残らない。それは時間が経てば分かることかなと思いますし、そのなかでどういうことができるのかと考えていけたらいいのかなと思っています」
松田「弊社がどちらかというとZ世代と呼ばれる10代の子たち、デジタルネイティブの世代の子たちと触れ合うことが多くて、YouTuberやTiktokerとかがいるんですけど、携帯ひとつで想像できないようなやり方で自分を表現しているなという感覚があるんです。そしてその子たちに、『カラオケがあるから歌手になりたいと思うし、“踊ってみた”があるからダンスを学びたいと思う。でも映画とか俳優って分からない』と言われたんです。だから僕はデジタルネイティブの世代に、このプロジェクトで映画製作を身近に感じて、一歩踏みこんで欲しい。そこから次世代が自分の作品を残していく流れを作っていけたらなと思っています」
小金澤「弊社はイオンシネマという映画館をやっているのですが、このコロナの影響でもう180度状況が変わりましたね。映画館って戦時中ですらやっていたような文化。そのなかで皆さんの命を守るために閉館するなんて、この業界に入った時には考えもしなかった。やっと新作も公開するようになってきてつくづく思うのは、映画館で映画を観るということが、こんなに楽しい体験になるんだと。やっぱり映画は映画館で観てもらって、その体験をみんなで語り合って完成するものだと思っていますから。そういう素晴らしい体験を完璧な状態、クオリティで届けないといけないなと、ますます身の引き締まる思いですね」