本広克行、押井守らが率いる実験的映画レーベル「Cinema Lab」が始動!上田慎一郎「純度を守って映画を作るのは難しい」
「踊る大捜査線」シリーズの本広克行監督らによる、実験的映画レーベル「Cinema Lab(シネマラボ)」の設立会見と、シネマラボ第1弾の映画『ビューティフルドリーマー』(11月6日公開)の完成披露試写合同イベントが、10月5日にスペースFS汐留で開催。監督4人とキャスト4名が登壇した。
最初に開催されたシネマラボの設立会見には、本広監督のほか、『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』(95)の押井守監督、『星空のむこうの国』(86)の小中和哉監督、『カメラを止めるな!』(17)の上田慎一郎監督が登壇した。
本広監督によると、シネマラボは、通称ATGこと日本アート・シアター・ギルドに着想を得て発起した、「監督絶対主義」を掲げる映画レーベルになると言う。「もともと監督会みたいなのがありまして。そこで大林宣彦監督や、山田洋次監督が、昔はもっと自由に撮れる撮影現場があったということを言われていて。そこで、ATGというすばらしい枠があったという話になりました。大林さんの『転校生』もそうでしたし」。
本広監督から、シネマラボについて相談されたという押井監督は「監督が自分目線で映画を作れるなんて、言ってしまえば、ほぼないこと。製作委員会や配給会社、役者さんの事務所だったり。そんなことを無視して、監督がどこまで自分の映画を作れるのかと。僕はとりあえず付き合うだけ付き合いたいと。長い目で見てやってほしいと思います」と訴えかけた。
上田慎一郎監督は、「カメ止め!」でブレイクする前からシネマラボに参加していたそうで「その時は、商業映画の不自由ささえも知らなかったけど、好きな映画が撮れるということで、二つ返事でやりますと言いました」と言う。その後、商業映画を撮った上田監督は「純度を守って映画を作るのは難しいと感じました」とのこと。すでに仕上がっているシネマラボの新作については「今回は純度の高い映画作りができました」と手応えを口にした。
続いて、『ビューティフルドリーマー』の会見となり、主演の小川紗良、秋元才加、飯島寛騎、ヒロシエリが登壇。『ビューティフルドリーマー』は、文化祭前日の先勝美術大学の映画研究会の部員の奮闘を描く物語。古い段ボールに入った1本のフィルムを見つけたことから、思わぬ事態が巻き起こる。
映画サークルに所属する大学生サラ役を演じた小川は「私自身、去年初めて長編監督作を撮ったりして、今回、追体験しているような気持ちになりました」と言ったあとで、シネマラボについて「私は映画界にいて、女優としても監督としても制約があるなかで、こういうレーベルは、すごく貴重だと思いますし、4名のベテラン監督が先陣を切ってくださったので、今後、若い監督や女性監督が続いていくのものになれば、すごく意味のあるものになると思います」と力強く語った。
劇中で、本人アキモトサヤカ役で出演した秋元は、「本当に実験的に作品でいろんな挑戦が詰まった映画。観終わったあとで、どうだった?とお話をしたくなる映画。1回じゃ観きれないかもしれないです」とコメント。また、イベントのMCも務めたヒロは、本作が映画初出演となったそうで「記念すべき第1作目に関われて、心の底から嬉しく思っています」と喜びを語った
また、飯島は「いつもやっているお芝居と違ったというか、不思議な画の撮り方で、監督の演出もそうですし、ワークショップで培ってきたエチュードもありましたし。本当にまったく新しいけど、ちょっと懐かしい不思議な感じで、実験ということにふさわしい映画になったかなと」と撮影を楽しんだ様子。全員が笑顔で作品をしっかりとアピールした。
取材・文/山崎伸子