永作博美と井浦新、『朝が来る』の河瀬組にうなる「頭で考えた芝居ではない」「魂が削られた」
『あん』(15)の河瀬直美監督が、直木賞作家、辻村深月のヒューマンミステリーを映画化した『朝が来る』(公開中)。第93回米アカデミー賞“日本代表作品にも決定した本作で、夫婦役を務めた永作博美と井浦新。役を“演じる”のではなく、その役として“生きる”ことを求められる河瀬組に、2人はどう挑んだのか?脚本を読んだ時に「怖かった」と、同じ感想を持った永作たちは、並々ならぬ想いで本作に挑んだようだ。
2人が演じたのは、不妊治療を行ったが、実の子を授かることが叶わず、「特別養子縁組」によって、14歳の中学生、片倉ひかり(蒔田彩珠)が生んだ男の子を養子に迎え入れた栗原佐都子(永作)と清和(井浦)夫婦。夫婦は、朝斗と名付けた息子と幸せな毎日を送っていたが、6年後、朝斗の産みの母親「片倉ひかり」を名乗る女性から、「子どもを返してほしい」という電話がかかってくる。
井浦は脚本を読んだ際に「この本に書いてあることを、これから自分自身が体験をしていくんだと思うと、正直、恐ろしくなって、読み終わるのに、ものすごく時間がかかりました」と恐れを抱いたそうだ。
「ちょっと読んでみては、『このシーンは一体どうなるんだろう?』と想像しつつ、自分が実際にこの作品に入った時、果たしてちゃんと立っていられるんだろうかと、考えてしまいました。僕自身も家族を持っていますので、正直、怖さのほうが大きかったです。挑みがいはもちろんある役だと思いましたが、河瀬監督作品は、ただ台詞を覚えていってできるような現場じゃないと聞いていたので、どうなるんだろうと不安になりました」。
小説と同じように、映画でも、栗原夫妻と、片倉ひかりの人生が、並行して描かれていく。永作は「最初に原作を読んだ時、それぞれのシーンがきちんと想像できる点が、すごいなと思いました。特に、ひかりのパートは、どんどん彼女の人生が加速していったので、この先を読みたくないと思うほど怖かったです」と述べた。