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片桐はいりとツァイ・ミンリャン監督が語り合う、引退宣言の真相と新しい映画館のかたち「私のやり方で限界を突破したい」

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片桐はいりとツァイ・ミンリャン監督が語り合う、引退宣言の真相と新しい映画館のかたち「私のやり方で限界を突破したい」

「映画は1回観たら終わりじゃないし、ストーリーを知るだけのものじゃない」(片桐)

2021年に来日予定のツァイ・ミンリャン監督。リアルな対談にも期待!
2021年に来日予定のツァイ・ミンリャン監督。リアルな対談にも期待![c]2020 TIFF

片桐「私は家で映画を観ると、あまり映画を観たというふうに思えない。このコロナ禍で、映画館がやっていない時に考えていたことは、いままであまりにもたくさんの映画が公開されて、たくさんの新作やたくさんの特集上映がやっているという状態が忙しすぎて、私にはちょっとトゥーマッチだったのかなと感じることもありました。映画は1回観たら終わりじゃないし、ストーリーを知るだけのものじゃない。何回も映画を味わいたいと思った時だったからこそ、『日子』には感動しました」

ツァイ・ミンリャン「コロナだからということも関係なく、いまは映画を観るということ自体がすごく多様化している時代。映画館でもスマートフォンでも観ることができる反面、その内容はすごく単一なものになっているように感じる。ここで映画館自体が新しい形態になってもいいのではないでしょうか。アートフィルムや個人的な映像表現の作品などが美術館のように上映される映画館がもっとあってもいいと思っています」

片桐「その話を聞いて、『楽日』で出てきた福和大戯院を思い出しました。こないだコロナ前に台湾を旅行した時に、『あなたの顔』に出てきた中山堂のホールも見に行ったのですが、台湾では古いものをうまく利用しておもしろいかたちで外国人にも見せてくれる印象があります。日本ではオリンピックに向けて必要かどうかわからないような建物がいっぱいできてジレンマを感じていますが、台湾では監督の理想とすることがうまくいくような気がします」

ツァイ・ミンリャン「世界のいろんな国にはたくさん素晴らしい古い建築物が残っている。それらはモダンアートともいえる。映画自体もモダンアートのひとつで、もし美術館を起点とした映画館があれば、そこでマーケットの概念とは違うコンセプトで上映することができる。そういう美術館が全世界にたくさんあってそれらが繋がればなお素晴らしいと思う。そういう概念を新しいものに変えていく、そういう思考が必要だと思います。ジャンルとか商業的だとかにかかわらず、作家が作った映像作品を発表する場が新しい映画館の形だと思っています」

片桐「最後に、監督が舞台劇を手掛けるために日本にいらっしゃるという噂を聞いたのですが、まだ成し遂げられないのでしょうか?コロナが過ぎたらぜひにと思ってるのですが」

ツァイ・ミンリャン「まだ確定していないことなので断定はできないですが、実はいま東京で舞台をやる計画がある。なので来年東京にいく予定です。コロナ禍でそれがどういうことになるかはかりませんけど、ぜひ東京に行きたいと思っていますので、少しでもはやくコロナが収まってほしいですね」

取材・文/久保田 和馬

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