「出崎統のアニメ版がもっとも忠実」実写版『家なき子』監督が明かす、日本版から受けた影響
エクトール・アンリ・マロが1878年に発表した児童文学の金字塔的作品を、フランスで実写映画化した『家なき子 希望の歌声』が11月20日(金)より公開される。これまで世界中で何度も映像化されてきた原作は、日本ではアニメーション版がよく知られている。そのなかのひとつ、東京ムービー新社(現トムス・エンタテインメント)が製作し出崎統が総監督を務めた「家なき子」と、本作のあいだに運命的なつながりがあることが明らかになった。
東京ムービー新社が製作した「家なき子」は、日本テレビ開局25周年記念作品として1977年から1978年にかけて放映。立体メガネのいらない(立体メガネをかければより立体効果が増す)立体映像「ステレオクローム方式」が採用されたり、物語の舞台となる南仏を取材し原作に忠実にアニメ化されるなど、意欲的な作風で人気を博した。
日本での放映後にはフランスやイタリアなど世界各国でも放映。それを観ていたひとりの少年が、のちに本作でメガホンをとるアントワーヌ・ブロシエ監督だ。
「原作小説の内容についてはあまり覚えていなかった。けれど子どもの頃に観た日本製アニメーションはよく覚えていたんだ」と語るブロシエ監督は、映画化を進めるにあたって久しぶりに東京ムービー新社版「家なき子」と再会。「興味深いことに、日本のアニメがもっとも原作に忠実な解釈をしているんだ。プロットだけじゃなく細部のアートディレクションもね。一部の人にとってはレミの帽子に巻かれた飾りやジョリクールの衣装に懐かしい記憶を呼び起こすんじゃないかな」と、改めて感銘を受けたことを明かした。
偶然にも、東京ムービー新社版「家なき子」のDVD BOOK「家なき子 COMPLETE DVD BOOKO vol.1」が10月29日に発売されたばかり(以降毎月第4木曜発売)。
トムス・エンタテインメントの関係者は「監督が当社のアニメをご覧になっていたのを知って感激しました。『家なき子』に込められたメッセージは、厳しい時代だからこそ共感できる部分も多いと思います。アニメは40年以上前に、スタッフが必死の想いで作り上げたものです。両者を見比べて楽しんでいただきたい」とコメント。
時代も国境を超えて奇跡的なつながりを果たした2つの「家なき子」。日本のアニメーションから大きな影響を受けた『家なき子 奇跡の歌声』を劇場で、そして40年の時を経ても色あせない東京ムービー新社版「家なき子」をDVD BOOKで味わい、少年レミの波乱万丈の物語を通して伝えられる無垢で普遍的なメッセージを受け取ってほしい。
文/久保田 和馬
発売日:10月29日(木) 以降毎月第4木曜発売
価格:1,500円+税
発行・発売:ぴあ株式会社