“警察監修”ってどんなお仕事?「TWO WEEKS」「サギデカ」から映画『望み』までを手掛ける、プロが宿すリアリティ
――堤幸彦監督がお話されていたことで、2人の刑事が夫婦に話を訊く時に、質問担当ではないほうが、答えていないほうの表情を観察するので、目線の動かし方を意識して撮っていたそうですが、そういうものなのでしょうか。
「それはあります。監督にその話を現場でしたかもしれませんし、警察ものを多く手掛けている監督だからご存知だったのかもかもしれません。質問を担当しない刑事は、まず相手方の挙動を見ます。やり取りをしている人が目配りできない部分を、同席者がフォローします。取り調べでも家族との接触でも同じことですが、一つの質問にも様々な意味があります。とはいえ、家族を共犯者と見ているわけではありません。あくまで捜査の一環です。こういった裏付けを積み重ねたことで捜査が成り立つものですから、担当の刑事はすべての情報を知り得ようとつとめます。なるべく平穏な時に本当の話を聞き出すことも重要で、相手がなにかを隠していると思ったら、本当の話を聞き出すために、話題を変えるなど、あの手この手を駆使していく。そのための2人体制なのです」
――ほかに、本作にリアリティを込めた部分はありますか?
「刑事の野田が『行方不明者届けを出されたほうが…』と提案する流れは、全国に捜査網を広げるために必要な手続きだと思いました。あくまでもご両親の意思に基づいて行われるものであって、警察主体では行えないので、ご理解をいただくことが大事なんです」
――ちなみに、松田翔太さんが謎めいた記者役を演じていますよね。ああいったマスコミの存在というのは、警察にとってはどうなのでしょう。
「物語上、そういう役割が必要だから仕方ないのですが、ああいう行為は被害者の方に過度な不安を与えますから、極力していただきたくないというのが私たちの本音です(笑)。マスコミとの関わり方で言うと、定例で回ってくる記者に、差し支えない範囲しか話しません。そうしないと捜査に支障をきたしますから。逆に、広報活動として必要な場合、マスコミに情報を投げてもらうことはあります」
――映画で起こる夫婦の意見の違いのようなことに実際、対応した経験はありますか。
「どの事件でも多かれ少なかれあるものです。一つの事件において、当事者の意見が全員一緒ということはほとんどありえません。『望み』では奥さんのお母さんが張り詰めた空気を抜いてくれるような存在になりますが、そういう人が必要だと思います。2人で解決できないことも、第三者がいて解決できることがあるんです」
――お話を伺って、『望み』は捜査に関しても、当事者の解決策に関しても、リアリティに基づいて描かれていることを感じます。
「『望み』の脚本を最初に読んだ時、この夫婦と同じような状態になったら…と考える人は大勢いると思いました。いざ当事者になるとパニックになりますが、映画だと冷静に観ることができますから、この作品が、犯罪の抑止になることを願います」