北村匠海と小松菜奈が『さくら』号泣シーンの舞台裏を語る「泣きすぎて、顔が動かなくなってしまうシーンもありました」
直木賞作家、西加奈子の同名小説を映画化した『さくら』(公開中)で共演した北村匠海と小松菜奈。今年5作目の映画となる『アンダードッグ』(11月27日公開)も待機中の北村と、主演映画『糸』(20)の熱演も記憶に新しい小松は、2020年も共に日本映画界を牽引してきた。2人を直撃すると、吉沢亮と3人で演じた兄弟妹役の感想だけでなく、もう一人の大事な“共演者”の存在や、染み入る家族の物語を演じた感想を明かしてくれた。
メガホンをとったのは、『ストロベリーショートケイクス』(06)の矢崎仁司監督。ポスタービジュアルにある、桜舞うなかでの家族写真を見るとほっこりするが、そのイメージで本作を観ると、うっかり火傷をしかねない。ある家族を、長いスパンで追っていく本作では、多感な思春期の初恋や失恋による心の揺らぎや、家族に起きる壮絶な悲劇によって破綻しそうになる一家の苦悩など、ヒリヒリする感情のうねりが、スクリーンに焼き付けられている。
本作に登場するのは、5人家族と飼い犬1匹で構成される長谷川家。学校の人気者で、イケメンの長男、一(ハジメ)役を吉沢が、兄をまぶしい目で見る次男、薫役を北村が、一を心から慕う末っ子の美少女、美貴役を小松が、常に明るい母、つぼみ役を寺島しのぶが、2年間も行方をくらませていた父、昭夫役を永瀬正敏が演じている。一家の幸せを象徴していたのが飼い犬の「サクラ」の存在だ。
動物との共演は、初めてだったという2人。サクラ役を演じたのは、ZOO動物プロのタレント犬、ちえだが、北村は「本当にお利口さんで、すばらしかった」と舌を巻く。
「ZOOさんのケアも含めてですが、ちえはすてきなお芝居をしてくれました。僕たちの感情にちゃんと寄り添ってくれるんです。言葉は通じないけど、毎回、ちえが奇跡を巻き起こしてくれたので、純粋にすごいなあと感心しました」。
小松も「ちえは本当に賢かったです」と感動しきりだ。
「私はちえを抱きかかえて車に乗るシーンを撮影しました。自分が長い台詞をしゃべるので、ちえが急に暴れ出したらどうしようと心配していたんですが、ちゃんと空気を読んで、おとなしくいてくれました。日々どんどん長谷川家と一体化していき、物語と同様に、サクラなしでは成り立たないような家族になったなと思いました」。
なかでも、夫の浮気を疑ったつぼみが、昭夫を問い詰めるシーンでのサクラが最高だ。サクラがテーブルの下から顔を出し、覗き込んでくるのだ。
北村は「あのシーンは、そうなればいいなという監督たちの願いのもとで起こった奇跡でした。ちえはどーんと構えていて、『はいはい。やりますよ』という感じで、しっかりと演じてくれました(笑)」と言うと、小松も「そうそう。欲しいのは、こういう仕草でしょ?という感じでやってくれたんです」と笑う。