佐藤浩市、石田ゆり子、西島秀俊が語り合う、コロナ禍で感じた“サイレント・トーキョー”の恐怖
「当たり前の日常が、当たり前じゃなくなることがある」(西島)
佐藤「映画では、クリスマスイブの渋谷に爆弾が仕掛けられたにもかかわらず、若者たちがたくさん集まってきます。日本にはテロはない、自分だけは大丈夫と過信してしまう彼らの状況は奇しくも、今年のコロナ禍でも人々が街に繰りだしてしまう状況と重なって見えない?」
石田「そうなんですよね。『サイレント・トーキョー』という言葉が予言のようで…。それこそ、今年の4月は『サイレント・トーキョー』でしたよね。街に人がまったくいなくて、恐怖を感じました」
佐藤「つまり、これが2019年の公開されるのと、2020年に公開されるのとでは意味が違ってくる。東京という街の怖さ、これに対する意識というのが、この半年間で随分変わりました。いま、僕らはその恐怖と共存していかなければならない。僕は今年、俳優生活40周年の節目で、そこにこんな経験をしたことで、ある意味、忘れられない年になりました」
西島「本当にそう思います。撮影している当時は、今日と同じ明日がまた来ると楽観的だった自分がいましたが、いまは当たり前の日常が当たり前じゃなくなることがあるのだと痛感しています。映画を観るといろいろな想いが去来します」
石田「昨年の暮れは、あれだけのエキストラの皆さんを現場に呼べましたが、コロナ禍のいま、そういう時代には当分、戻れませんよね。映画で起こることとコロナは違うとはいえ、観た方がこの映画を観てなにを感じるか、気になります」
佐藤「ご覧になった皆さんがどういうふうに思ったか、ぜひ聞いてみたいですね。とはいえエンタメ作品ではあるので、まずは楽しんで頂きながら、最後になにか小骨のようなものが喉元に刺さってくれればいいなと思っています。是非、劇場で楽しんでください」
構成/久保田 和馬
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