トライ&エラーの繰り返しで巨大企業に!Netflix黎明期にまつわる知られざるエピソード
2020年9月末の時点で、世界中での総登録者数が1億9500万人に到達したNetflix。映画や海外ドラマを配信するだけでなく、アカデミー賞やエミー賞にかかるようなハイレイベルなオリジナル作品を多数生みだすような超ビッグな企業となって久しいが、もちろんそんなNetflixにも始まりがある。
一介のスタートアップ企業だったNetflixがいかにして、時価総額2000億ドル(2020年4月)とまで言われる巨大企業になったのか。創業に関わったメンバーたちの証言から、その秘密に迫っていくドキュメンタリー『Netflix 世界征服の野望』が公開されているいま、波乱万丈な道のりを知られざるエピソードとともに紹介したい。
Netflixは無知が幸いして誕生した…!?
日本では、配信サービスという印象が強いであろうNetflixだが、もともとはDVDの郵送レンタル(厳密にはDVDの販売も行っていた)から始まった企業。いまでもアメリカでは、200万人ほどの会員がDVDの宅配レンタルを利用しているそうだ。
現CEOのリード・ヘイスティングスとマーク・ランドルフというシリコンバレー界隈の2人が、延滞料金に人々の不満が募っていたVHSレンタルに目をつけ、延滞料金不要の郵送システムにできないかというところからスタート。VHSの郵送コストや破損の可能性などに頭を悩ませていたところ、タイミングよくDVDの黎明期が訪れたのだ。
ヘイスティングスが地元の郵便局から自宅に裸のCDを封筒に入れ送ってみたところ破損していなかったため、彼らは創業へ踏み出すことになるが、事業を始めてまもなく、利用者からDVDが破損していたという知らせが届く。というのも、全国に展開する大きな郵便局では機械で仕分けが行われていたのだ。
すでに事業を始めていたため、この問題を解決するという方向に舵を切ることになったが、もしヘイスティングの出したCDが大きな郵便局を経由し破損していたら、また、もしこの事実を予め知っていたら、Netflixは誕生していなかったかもしれず、運の良さと無知が企業誕生の鍵を握っていたともいえる。
幻のオリジナル第1弾作品は、なんとポルノ…?
初日からサーバーのパンクを繰り返すといったトラブルを抱えながらも、次第に軌道に乗り始めていくNetflix。次なるステップに進むため、レンタルの定額制を導入するなど様々な試みにトライしていくなか、信じられないようなミスを犯してしまったことをご存知だろうか。
より会社を大きくするために、話題を集めていたクリントン大統領(当時)の不倫騒動に関する裁判の映像を編集したものをオリジナル作品第1弾として売りだし、実際多くの注文が寄せられたそうだが、そこには落とし穴が…。利用者がDVDを再生すると、なんと中身は中華ポルノだったという。
DVDに映像を焼いた際の業者の手違いと、スタッフがDVDの中身の確認を怠っていたことで起きてしまった事故だったが、真摯にミスを認めたことで事なきを得たそう。ミスをすればただちに認めて改善するという姿勢は、現在まで受け継がれているそうだ。
ブロックバスターとの熾烈な争い、その意外な決着とは?
Netflixが成功を語るうえではずせないのが、ライバルであるブロックバスター社の存在だ。かつては全米だけで9000店舗以上を構えていたこのレンタルビデオチェーンは、あとからレンタル業界に参入した弱小企業の前に、大きな障壁として立ち塞がっていく。
実際、Netflixが郵送のシステムで成績を伸ばし始めると、脅威に感じたブロックバスターも郵送を開始。さらに、実店舗を持っている強みを生かした、郵送と実店舗を組み合わせたアイデアを採用し、一時期はオンラインレンタルの一番手であったNetflixの牙城を崩しかねないほどの勢いだったという。そんな熾烈な争いをNetflixはいかにして乗りきったのか?意外すぎる顛末は、ぜひ映画を観て確認してほしい。
DVDレンタルからストリーミング配信に行こうし、時代の波に合わせて進歩を続けてきたNetflix。いくつもの挑戦と失敗を繰り返してきたからこそ、利用料金の値上げですら歓迎されるようなブランドになり得たのだろう。
文/サンクレイオ翼