アカデミー賞有力作が揃いぶみ!批評家が選ぶ、2020年のNetflixオリジナル映画の“フレッシュ”は?
2020年のNetflixオリジナル映画で最も高い評価を集めたのは、新鋭レミ・ウィークス監督が手掛けたホラー映画『獣の棲む家』。戦火の南スーダンを逃れてイギリスに亡命した若い夫婦が、新居として用意された家にある違和感を覚えるという本作は、王道の“家系”ホラーでもありながら難民・移民問題にも切り込む、ブラムハウス・プロダクションズ作品を彷彿させる一本。
しかも本作は脚本の段階で2018年のサンダンス映画祭で発表された「サンダンス・インスティチュート/NHK賞」を受賞。過去に同賞にはミランダ・ジュライやアカデミー賞候補になったベン・ザイトリン監督の『ハッシュパピー バスタブ島の少女』(13)が受賞しており、ウィークス監督の今後の活躍にも期待できそう。新たな才能を先取りするならいまがチャンスだ。
99%フレッシュを獲得したのは、12月に配信がスタートしたばかりの『マ・レイニーのブラックボトム』。“ブルースの母”と呼ばれたマ・レイニーと、彼女のレコーディングに参加したことで運命が変わるトランペッターを描いた本作は、配信開始前からアカデミー賞の有力候補として大きな注目を集めてきた作品。
マ・レイニー役を演じるオスカー女優ヴィオラ・デイヴィスと、トランペッターのレヴィー役を演じ、これが遺作となったチャドウィック・ボーズマンの刺激的な演技のぶつかり合い。一部では『羊たちの沈黙』(91)以来の主要5部門受賞(作品・監督・主演男優・主演女優・脚本部門)の受賞も夢ではないとの声も。
また、この上位10作品には第93回アカデミー賞をにぎわすであろう作品がずらりと並ぶ。94%フレッシュの『これからの人生』は名女優ソフィア・ローレンの演技が高く評価され、『ザ・ファイブ・ブラッズ』はスパイク・リーの演出はもちろん、本作にも出演しているボーズマンとデルロイ・リンドーらの演技アンサンブルが高評価。
出演俳優たちの熾烈なアンサンブルと言えば、エディ・レッドメインやマーク・ライランスら近年のオスカー受賞者が共演する『シカゴ7裁判』も然り。アニメーション部門でも『ウィロビー家の子どもたち』が今年のNetflix作品の代表格として目されている。
他にもニューヨークを拠点に活動する脚本家ラダ・プランクが自ら監督・脚本・主演の三役を務めた『40歳の解釈:ラダの場合』や、惜しくも上位10作品には入らなかったが高評価を得た『フェイフェイと月の冒険』の脚本にも参加したアリス・ウーがメガホンをとった『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』と、注目の新鋭作家の作品も。そして名探偵シャーロック・ホームズの妹エノーラ・ホームズが活躍する人気ミステリシリーズを映画化した『エノーラ・ホームズの事件簿』も必見。
上位に入らなかった作品でも、デイヴィッド・フィンチャー監督が名作『市民ケーン』(41) の製作の舞台裏に迫った『Mank/マンク』や、ジョージ・クルーニーが監督・主演を務めたSFドラマ『ミッドナイト・スカイ』、メリル・ストリープとニコール・キッドマンが共演した『ザ・プロム』など、まだまだ注目作品は目白押し。年末年始はNetflixにアクセスし、自宅でじっくりと有意義な時間を過ごしてみてはいかがだろうか。
文/久保田 和馬