ゆくゾンビ、くるゾンビ…話題作と共に検証する、ゾンビブームの移り変わり
かつてはマニア向けのジャンルという印象が強かったが、ここ10年ほどで一気にメインストリームにまで上り詰めた“ゾンビもの”。膨大な製作費が投じられた大作からユニークなアイデアで魅せる作品まで、世界中で様々なタイプの映画やドラマが制作されてきた。
特に2020年は、韓国で制作されたNetflix映画『#生きている』が、全世界で視聴ランキング上位にランクインしたり、インディーズ映画界の巨匠、ジム・ジャームッシュ監督の意欲作『デッド・ドント・ダイ』が映画ファンの間で話題になったりと、ゾンビものがこれまで以上に市民権を得たと言えるだろう。
新作も多数控えるこの年末年始、いまだからこそチェックしたい作品と共にその移り変わりを紹介したい!
2010年代のシーンを牽引した名作がいよいよ完結…“ゆくゾンビ”「ウォーキング・デッド」
まずは、ゾンビブームの立役者となったドラマシリーズ「ウォーキング・デッド」。その人気の高さゆえに、2010年のスタートから今年で10周年を迎えたご長寿シリーズだが、ついに2022年のシーズン11で終了することが決定。完結に向け、2021年2月末からはシーズン10の追加エピソード6話がアメリカで放送されるなど、いよいよ!という時期を迎えており、改めて観るにはもってこいのタイミングとなっている。
ロバート・カークマンによる漫画「ザ・ウォーキング・デッド」を原作に、『ミスト』(07)などの監督で知られるフランク・ダラボンが企画し映像化された本作。小さな街で保安官を務める主人公のリック(アンドリュー・リンカーン)が、勤務中のケガから目覚めますと、そこは“ウォーカー”と呼ばれるゾンビがはびこる終末世界に。リックは家族や次々と出会う仲間たちと協力して、なんとか生き抜こうとするが、数々の困難が襲いかかり…。
個性豊かな登場人物や、「え?その人死んじゃうの?」という容赦ない展開など、様々な魅力を持っている本作の最も大きな特徴といえば、ゾンビとの闘い以上に恐ろしい人間同士のぶつかり合いがメインとなっている点だ。集団で暮らしていくなかでの小さなすれ違いが徐々に大きくなっていったり、自らの王国を築き上げる人物が登場したりと、過酷な状況でこそ浮き彫りになっていく人間の醜い一面がしっかりと描かれた人間ドラマにもなっている。
さらにハリウッドで活躍する製作者たちも名を連ね、予算を十分に注ぎ込んでいるからこその見応えある映像も加わり、ゾンビというジャンルものでありながら、長きにわたって続いてきただけの強度が備わっている。映画化されることも決定しており、2021年春から撮影開始とも報じられているので、ぜひチェックしておきたいところだ。