時代を築いたスターから、ファンを虜にした名匠も…2020年に去った映画人を偲ぶ
映画監督・スタッフ
テリー・ジョーンズ(コメディアン・77歳・1月21日)
イギリスを代表するコメディグループ「モンティ・パイソン」のメンバーとして知られ、『ライフ・オブ・ブライアン』(79)など同グループの映画作品では監督を務めたことも。近年ではサイモン・ペグ主演の『ミラクル・ニール!』(15)を手掛けた。
スチュアート・ゴードン(映画監督・72歳・3月24日)
カルト的人気を誇る『ZONBIO/死霊のしたたり』(85)などホラー映画の名手として知られ、『フロム・ビヨンド』『ドールズ』(ともに86)などで、1980年代のホラーブームをけん引した。また原案を担当した『ミクロキッズ』(89)などSF作品も得意とし、晩年は舞台演出などを手掛けていた。
堀川とんこう(演出家・82歳・3月28日)
TBSに入社し、70年代から「岸辺のアルバム」など多くのテレビドラマ作品で演出家・プロデューサーとして活躍。2001年には吉永小百合と天海祐希が共演した『千年の恋 ひかる源氏物語』で監督を務めた。
佐々部清(映画監督・62歳・3月31日)
降旗康男監督の助監督などでキャリアを積み、『陽はまた昇る』(02)で監督デビュー。『半落ち』(04)では日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞し、その後も地元山口県下関市など地域に根差したヒューマンドラマの名手として多くの作品を世に送りだした。
大林宣彦(映画作家・82歳・4月10日)
『花筐/HANAGATAMI』(17)のクランクイン直前にステージ4の肺癌と診断され、余命宣告を受けながらも作品を完成。その後、21年ぶりに出身地である広島県尾道市を舞台にした監督作『海辺の映画館ーキネマの玉手箱』を手掛け、当初同作の公開が予定されていた、本年4月10日に“映像の魔術師”は旅に出た。
ジョエル・シュマッカー(映画監督・80歳・6月21日)
青春映画から「バットマン」シリーズや濃密なサスペンス、さらには『オペラ座の怪人』(04)まで数々の印象的な作品を送りだしてきたハリウッド随一の職人監督。テレビドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」で監督を務めて以降、長く闘病生活を送っていた。
エンニオ・モリコーネ(作曲家・91歳・7月6日)
1960年代に一世を風靡したマカロニウエスタン映画の作曲家としてその名を馳せ、『ニュー・シネマ・パラダイス』(89)など代表作は数知れず。晩年にはクエンティン・タランティーノ監督の『ヘイトフル・エイト』(15)で初めてアカデミー賞の栄誉に輝いた。
森崎東(映画監督・92歳・7月16日)
国民的映画シリーズ「男はつらいよ」の第1作で脚本を、第3作では監督を務めたこともある日本の喜劇映画界のレジェンド。病身を押してメガホンをとった遺作『ペコロスの母に会いにいく』(13)は、第87回キネマ旬報ベスト・テンで日本映画ベスト・ワンなど、多くの映画賞に輝いた。
アラン・パーカー(映画監督・76歳・7月31日)
『小さな恋のメロディ』(71)の脚本家として知られ、『ミッドナイト・エクスプレス』(78)や『バーディ』(84)など良質な作品を数多く発表。『ライフ・オブ・デヴィッド・ゲイル』(03)を発表後、映画界から引退。「ハリー・ポッター」の監督オファーを断ったとも言われている。
イジー・メンツェル(映画監督・82歳・9月5日)
アカデミー賞外国語映画賞を受賞した『厳重に監視された列車』(67)など、「チェコ・ヌーヴェルヴァーグ」の主要な監督のひとり。政治的事情で上映禁止になっていた『つながれたヒバリ』(69)は、20年以上の封印を経て1990年のベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した。
岡田裕介(東映グループ会長・71歳・11月18日)
俳優としてデビューしたのち、プロデューサー業に転身。『宇宙からのメッセージ』(78)や『動乱』(80)などを手掛けヒットに導き、東映に入社後も吉永小百合の主演作など様々な作品でその辣腕を発揮、2014年には代表取締役グループ会長に。『いのちの停車場』(2021年公開)では陣頭指揮を務めていた。
キム・ギドク(映画監督・59歳・12月11日)
1990年代後半から韓国映画界の鬼才として注目を集めると、2004年には『サマリア』でベルリン国際映画祭の監督賞を、『うつせみ』でヴェネチア国際映画祭の監督賞を受賞。隠遁生活から復帰後の『嘆きのピエタ』(12)で韓国映画初の三大映画祭最高賞を獲得するが、2017年と2018年に立て続けに性的暴行で告発され、映画界から追放。訪問先のラトビアで、新型コロナウイルス感染症のため死去した。
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以上、駆け足ではあるが、この世を去った先人たちの業績を振り返ってきた。
世界中が大きな悲しみと不安に包まれ、エンタテインメントの価値があらためて問われた2020年。亡くなったすべての映画人に哀悼の意を表するとともに、新たな年が誰にとっても平穏で、幸福に満ちたものになることを願ってやまない。
(文中、いずれも敬称略)
文/久保田 和馬