ジョージ・クルーニーが明かす、コロナ禍の新作に込めた願い「人生には闘っていく価値がある」
「パンデミック後のいまと、本作はリンクしていると思う」
クルーニーといえば、サンドラ・ブロックとW主演を務めたアルフォンソ・キュアロン監督作『ゼロ・グラビティ』(13)もリアリティを追求したSFサスペンスとして高い評価を受けたが、本作でも美術面において徹底的にこだわったそう。
「宇宙船を、どこにでも登場しそうな見たことのあるものにはしたくなかった。プロダクションデザイナーのジム・ビゼルがたくさんのNASAのエンジニアと会って、未来にはどんなものが作られるのか、リサーチをするところから始めたんだ。レーザープリンターが応用されているかとか、外装がケブラー素材に近いとか、いろいろなことが研究されているそうで、それらを参考にしたよ」。
また、人類が希望を抱く惑星K23については「地球とは違った外観ながらも、生活ができそうなだけでなく、そこで生きる価値がありそうな美しい惑星にしなければいけない」と思ったそうだ。「VFXのマット・カスミールと撮影監督のマーティン・ルーエと一緒にデザインしたのが、ヨーロッパの山脈のような岩場の多い山間の風景だった。木星が見えて、空がブルーじゃなくてオレンジ色なんだ」。
奇しくも2020年は世界中がコロナ禍に見舞われたが、地球滅亡の危機という設定や、VR で離れた家族と過ごす宇宙船の乗組員の姿には、パンデミック後のいまとなっては重ねて観てしまう部分も多い。
「リンクはしていると思うよ。劇中ではなにが原因で地球が滅びたかには言及していない。核による大惨事や気候によるグローバルな壊滅などいろいろ原因はあり得るけど、プロジェクトが立ち上がった当初は、こんなパンデミックが起こるなんてことは考えていなかった。2月に撮影が終わった後は、このストーリーを綴るにおいて、(コロナの存在により)いまのような形に編集せざるを得なかったんだけど。その結果、人がいかに誰かと深く繋がる必要があるのか、いかに“home”に戻りたいのか、いかに愛する人々の近くにいたいのかを語る作品になったのは明らかだ」。
確かに、いまのコロナ禍において、オーガスティンたちの家族への思慕はとても胸に迫るものがある。
「きっとオーガスティンたちに限らず、誰もが“home”に戻りたいと思うんじゃないだろうか。僕も実生活で、母や父と一緒にいたいと思う。彼らはもう若くはないし、いま愛する人に会えず、辛い気持ちになっているのはみんな一緒なんじゃないかな。ただ、きっと人生には葛藤し、闘っていくに値する意味があると思う。たとえ全員が生きのびることができなくても、僕たちがいま、闘うこと自体が大切だということを、『ミッドナイト・スカイ』で伝えたいと思った」。
クルーニーはそう話すと、最後に「ありがとう!次回は直接、みなさんと会って話をしたいな」と笑顔で締めくくってくれた。
取材・文/山崎伸子