【今週の☆☆☆】西野亮廣×STUDIO4℃の美麗な画を堪能できる『映画 えんとつ町のプぺル』、吉沢亮主演作『AWAKE』など、週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今週は、西野亮廣原作・製作総指揮・脚本による冒険物語、棋士とコンピュータとの対局「電王戦」に着想を得た青春ドラマ、ホロコーストで大切な人を失った少女と男性の交流を描く感動作の3本!
夢、挑戦、父と息子の絆――随所で涙腺を刺激する『映画 えんとつ町のプぺル』(公開中)
キングコングの西野亮廣が手がけ、海外人気も高い大ベストセラー絵本がついに映画化。舞台は一日中、厚い煙に覆われた「えんとつ町」。星の存在を信じる少年ルビッチとゴミから生まれたゴミ人間プペルが、この町に隠された大きな秘密に迫っていく。何より注目すべきは『鉄コン筋クリート』や『海獣の子供』などで知られるSTUDIO4℃初となるフル3DCGアニメーションの圧倒的な美しさ!絵本の温かいタッチはそのままに、緻密かつファンタジックな映像表現で、私たちをキラキラした夢の世界へと一気に誘ってくれる。またストーリーは、絵本で描かれたルビッチとプペルの友情を入り口に、新たなキャラクターやエピソードがたっぷり織り交ぜられ、ぐっと大人向けの作品に。夢、挑戦、父と息子の絆…涙腺を刺激するポイントも随所に仕掛けられている。ゴミ人間プペル役の窪田正孝は少々意表を突かれるほど、声優としての才能を発揮!(映画ライター 石塚圭子)
将棋VSコンピュータを背景に、ふたりの青年の苦悩と葛藤を描く…『AWAKE』(公開中)
新鋭・山田篤宏監督が、2015年の将棋電王戦FINAL第5局のコンピュータと棋士の伝説の対局にインスパイアされて書き下ろした自らのオリジナルシナリオを映画化。と書くと、将棋のルールが分からない人は楽しめないのかな?と思いがちだが、そんなことはない。本作は将棋とコンピュータの世界を背景に、自らの夢をつかもうとするふたりの青年の苦悩と葛藤、戦いとその先の光を描いた青春ムービー。棋士になる夢に破れた主人公・英一が将棋のプログラミングで巻き返しをはかり、将棋界の重圧を背負う若き天才棋士・陸がその再戦を受けたときにいったい何が起こるのか!?見どころはそこだ。英一に扮した吉沢亮も陸を演じた若葉竜也も、少ないセリフを代弁する表情と仕草でそれぞれの心情を伝え、その狂おしいエモーションが繊細に交錯する。クライマックスはもちろんふたりの因縁の対局だが、彼らが本当の笑顔を見せるのはいつなのか?そこに注目して観ると感動がより増幅するかも。(映画ライター・イソガイマサト)
優しく琴線に触れてくる、繊細で深遠な物語…『この世界に残されて』(公開中)
16歳の少女と、42歳の担当医師。どんなスキャンダル話かと思いきや、なんとも繊細で深遠な物語。第二次大戦後のハンガリー。ホロコーストを生き延びたが家族を喪った16歳のクララは、周囲に頑なに心を開かない。そんな折、寡黙な医師アルドに診てもらったクララは、どこかシンパシーを感じ取る。アルドもまたクララの聡明さに気付き、彼女の反抗や屈折をそっと受け入れる。そんなアルドを父のように慕い始めたクララは、押しかける形でアルドのアパートで暮らし始めるが――。クララがいきなりアルドのベッドに潜り込む瞬間はドキリとするが、温もりを感じて添い寝する2人の姿になぜか心が震える。なぜならアルドもまたホロコーストの犠牲者であり、2人の間の空気は優しく乾いているから。アルドを襲った悲劇の詳細は中盤以降まで明かされないが、互いを見つめる眼差しの切なさが、大きな喪失と痛みを抱えた者同士にしか分かり合えない、悲しみ混じりの慈しみを醸す。ところがソ連が支配を強め、2人の関係が誤解を招き―。重くもあるが優しく琴線に触れてくる、さながら大河ロマン映画を観たような満腹・満足感!(映画ライター・折田千鶴子)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼