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どうなる2021年アカデミー賞!ゲーム・チェンジが予想される作品賞候補まとめ

コラム

どうなる2021年アカデミー賞!ゲーム・チェンジが予想される作品賞候補まとめ

評価の高い作品ながら、リー・アイザック・チャン監督の『ミナリ』はゴールデン・グローブ賞作品賞の対象から外されている
評価の高い作品ながら、リー・アイザック・チャン監督の『ミナリ』はゴールデン・グローブ賞作品賞の対象から外されているCourtesy of Sundance Film Festival

その他作品賞にノミネートされそうなのは、サンダンス映画祭でプレミアが行われたリー・アイザック・チャン監督の『ミナリ』(3月19日公開)。韓国からアーカンソー州に移民した家族の物語で、作品賞の他に父親役を演じたスティーブン・ユアンがアジア系俳優として初めて主演男優賞にノミネートされるのではと言われている。
ところが、オスカーの前哨戦(と言うよりも、アカデミー会員が投票前に駆け込みでおさらいをする場)として知られているゴールデン・グローブ賞が、『ミナリ』の劇中使用言語の大半が韓国語であることから作品賞の対象から外し、外国語映画賞として審査すると発表したことにより、現在大きなバックラッシュが起きている。『ミナリ』は、韓国系米国人のチャン監督の半自伝的作品で、ブラッド・ピットが製作総指揮を務め、彼の製作会社プランBとA24が共同製作した作品。サンダンス映画祭では米国ドラマ映画審査員賞と米国ドラマ映画観客賞を受賞している。

オリヴィア・コールマンとアンソニー・ホプキンスが父娘を演じる『The Father』
オリヴィア・コールマンとアンソニー・ホプキンスが父娘を演じる『The Father』Courtesy of Sundance Film Festival

同じくサンダンスでプレミア上映された映画では、オリヴィア・コールマンとアンソニー・ホプキンスが年老いた父娘を演じる『The Father』、「サタデー・ナイト・ライブ」などで活躍するコメディアンであり俳優のアンディ・サムバーグと『ウルフ・オブ・ウォール・ストリート』(13)のクリスティン・ミリオティが主演した『パーム・スプリングス』(春公開予定)、サンダンスに引き続きベルリン国際映画祭に出品、銀熊審査員賞を受賞した『Never Rarely Sometimes Always』も候補に上がりそうだ。
『パーム・スプリングス』は、昨年『パラサイト 半地下の家族』の米国配給を手がけたNEONとHuluがサンダンスのマーケット史上最高額で獲得、米国では2020年7月よりHuluで配信されているタイムリープものコメディ。配信系の作品では、Netflixが複数作品を作品賞候補に入れてくる可能性がある。
2020年9月に劇場公開予定だったが、Netflixで配信となったアーロン・ソーキン監督の『シカゴ7裁判』(20)や、デヴィッド・フィンチャー監督のモノクロ作品『Mank/マンク』(20)、スパイク・リー監督の『ザ・ファイブ・ブラッズ』(20)、ジョージ・クルーニー監督作『ミッドナイト・スカイ』(20)など。

聴覚を失ったドラマーの葛藤を描く『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』
聴覚を失ったドラマーの葛藤を描く『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』写真:SPLASH/アフロ

Amazon Prime Videoでは2019年のトロント国際映画祭で上映された『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』(19)、レジーナ・キングの初監督作で『ノマドランド』に次ぐ観客賞次点1位に選ばれた『あの夜、マイアミで』(1月15日配信)などが有力視されている。Apple TV+で配信されたソフィア・コッポラ監督の『オン・ザ・ロック』(20)、アニメーション作品ではDisney+の『ソウルフル・ワールド』(20)も候補に上がるかもしれない。
そして忘れてはいけないのが、クリストファー・ノーラン監督の『TENET テネット』(20)。賞レースでは過小評価されがちなノーラン監督だが、今年ばかりは彼の言動に心を動かされたアカデミー会員も多かったと思う。劇場で映画を観ることを愛し、最高の環境で映画を観客に提供することにこだわったノーラン監督の孤高の戦いは、2020年功労賞を授与してもいいくらいだ。

文/平井伊都子

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