山崎賢人が明かした、演じることの喜び「これで“正解だ”と思ったことはない」
「弱さや痛みを知っている人間の強さを、役者として伝えたい」
過去のインタビュー等でも「人間の弱い部分に共感する」と発言してきた山崎だが、「弱さや痛みを知っている人間のほうが、最終的に強い。そういった部分を表現するのが好きですし、自分としても伝えたいことなんだと思います」と分析する。
「作品によっては全然そんなことを考えなかったり、表に出さなかったりする役柄もありますが、本作に関しては、もともと強い男じゃなかったアリスが、弱い部分があるからこそ成長していく流れがある。そのため、より強く、“想い”を表現できました」。
興味深いのは、土屋も同じく、“人間の弱さ”に着目しながら役と向かい合っていると発言していたことだ。本編中の台詞のやり取りからは両者の息の合った演技が伝わってくるが、「5年ぶりの共演ですが、(土屋)太鳳ちゃんは、十代のころから、つらいことも一緒に乗り越えてきた仲間です。人生って楽しいことだけじゃないけど、苦しいことや悩みも相談しあえたし、そのうえでアリスとウサギとして、作品に入れたのは大きかったですね」と信頼をにじませる。
「これまでの共演では、太鳳ちゃんが“座長”として引っ張ってくれることが多かった。今回は自分が引っ張る立場だから、強くないといけないとは思っていました」と明かした山崎。自身の“座長”としての在り方を聞くと「これまでの作品でも、『座長だから特別なことをしよう』という意識はあまり持たないようにしていました。自分が全力でやりきって、その結果みんなを引っ張っていけたらいいな、というスタンスです」との答えが返ってきた。
「ただ、今回のような『生きる』という覚悟を決める作品においては、より力強さは意識します。そして、毎回全力で取り組む。映像作品は総合芸術で、カメラのタイミングがずれたり、色々なことがかみ合わなかったり、様々な事態が発生します。でも、僕はそこを言い訳にしたくない。だからこそ、全部全力でやりきろうと思っています」。
「自分の演技が“正解だ”と思ったことはない」
穏やかななかにも、時折責任感と覚悟が顔を出す山崎。涼しい顔をしながらも、心の内には熱いものを秘めている――。それこそが俳優・山崎賢人の無二の魅力と言えるが、いま現在の彼は、「演じること」をどう捉えているのだろう?率直に聞いてみた。
「そうですね…。いつまでたってもわからない部分は多いですが、わかっちゃうことがないから、楽しいのかもしれません。うまくいかないこともあれば、気持ちいい瞬間もあり、全然固まることがないんですよね。だからこそ、演じることが好きなんです」。
佐藤監督は山崎に対して、「ある種の不器用さが魅力」と語っていたが、まさにこの発言とリンクするのではないか。わかったような気にならず、常に新鮮な想いで役や作品にぶつかっていく。戸惑うことや変化を恐れない“強さ”が、彼の言葉にはあふれている。
「もちろん、演じていて『いま、良かったんじゃないか。うまくできた!』と思う瞬間はありますよ。でも、『この演技が“正解だ”』と思ったことは、ないですね」。
答えを出さないから、限界もない。そして、演技に対して謙虚でい続ける。山崎は「佐藤監督は、僕が『なんだかうまくいかないな…』という顔をしていると、すぐにこっちに来てくれて、話を聞いてくれる。すごく優しいんです」と感謝を述べるが、それもまた、彼の人間的魅力がなせる業といえるのではないか。
山崎の役者としての矜持が伝わるインタビューも、終わりの時間が近づいてきた。最後に、年末年始に堪能したい山崎のオススメコンテンツを教えてもらい、締めくくりとした。
「漫画や映画、ドラマは結構観ているから、いっぱいありますね…。Netflixオリジナル作品だと『ストレンジャー・シングス』や『ブラック・ミラー』が好きで、オリジナル作品以外で、Netflixで観てハマったのは、『THE 100/ハンドレッド』ですね。漫画だと、最近読んでおもしろかったのは『チェンソーマン』。そこから、藤本タツキ先生の過去作『ファイアパンチ』をさかのぼって読んでいます」と、目を輝かせて話してくれた。
取材・文/SYO
※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記