【レビュー】25年を経た『美少女戦士セーラームーンEternal』は、大人になった“いまの自分”のための映画だ!
2012年から「美少女戦士セーラームーン20周年プロジェクト」が始動して早9年。このたび満を持して劇場版の新作映画『美少女戦士セーラームーンEternal』が、公開中の前編、2月11日(木・祝)公開の後編の二部で製作された。
90年代当時のアニメを受け継いだデザインは、ファン必見!
今作では前後編で原作の第4部にあたる「デッド・ムーン」編が描かれる。なんといっても特筆すべきは、キャラクターデザインを只野和子が務めたことだろう。只野は90年代アニメシリーズの「美少女戦士セーラームーン」と「美少女戦士セーラームーンR」で作画監督とキャラクターデザインを担当。古き良き“セーラームーンアニメの絵”は只野あってのものなのである。
原作者の武内直子も、「長い間熱望していた只野和子氏の可愛くやわらかい、原点に戻った様なデザインに飛び上がる程の喜びです」と大絶賛。『美少女戦士セーラームーンEternal』の公式サイトを開くと、まず武内のこの喜びのメッセージが表示されるくらいである。
『美少女戦士セーラームーンEternal』の前編は、各セーラー戦士が一人ずつ戦うシーンがストーリーに組み込まれているため、セーラーマーズ、セーラーマーキュリー、セーラージュピター、セーラーヴィーナスそれぞれの変身シーンを当時の作風そのままに大画面で堪能できるのもうれしい。
自身の年齢の変化ゆえの、見え方の違い
「美少女戦士セーラームーン」シリーズは、90年代に放送されていたテレビアニメと原作では、実はかなり雰囲気が異なる。
原作がやや大人っぽく真面目なストーリー進行だったのに対し、90年代アニメシリーズはコミカルな要素が多かった。キャラクターについても、火野レイ(セーラーマーズ)の性格や、天王はるか(セーラーウラヌス)の設定が大きく異なっていたり、(おそらく放送の尺や回数の関係で)敵についてアニメではより深く掘り下げられていたりした。
一方で、20周年プロジェクトで始まったアニメ「美少女戦士セーラームーン Crystal」は原作に忠実に作られている。今回の劇場版も、「Crystal」から続くものであり、基本的には原作通りに進む。
こういった昔の作品の復刻版を観るとき、「いまの自分」として観る人と、「当時の自分に戻って」観る人とがいるように思う。
前者はまったく新しい作品として受け取る感想が変わり、後者だと懐かしいという感情に全振りした見方をする。そのため、後者の場合は昔と作風が少しでも違っていると受け入れづらいこともあるかもしれない。
私はどちらかというと前者のタイプだ。私自身、いわゆる「セーラームーン世代」にあたるのだが、20周年プロジェクト以降、大人になってから改めて作品に触れてみると、主人公の月野うさぎちゃんやちびうさから受ける印象が当時と全然違っていた。
正直に言うと、私は昔、ちびうさがあまり好きではなかった。…あまり、というか、結構嫌いだった。ちびうさは自分の周りでも好き嫌いが分かれていた印象で、素直にかわいいと言っていた人たちと、そうでない人とで意見は真っ二つだったように思う。
当時10歳そこそこの私はあの感じを「かわいい」とは決して思えず、「いけ好かないガキ」にしか見えなかったのである(好きだった方、すみません)。ひとりっ子で年下の親戚もいなかったのが、対ちびうさの感情に影響していたような気もする。「自分よりも年下の子への振る舞い」をどう受け止めたらいいのかがよくわからなかったのだ。
それがいま観ると、彼女たちに抱く感情はただただ「かわいい」。よく考えてみると、中学生のうさぎちゃんたちですら、いまの自分にとってはずいぶん年下になってしまっているわけだ。それよりも年下のちびうさなんて、もはや孫みたいなものである(と言っても、年齢は900歳だけど)。
かつてアニメや漫画が好きだった方々には、そのような視点の変化も楽しんでいただきたいポイントだ。